有機ELを超えるSDGsな量子ドット式ディスプレイが実用化へ前進

プレスリリースより

より高画質化を求め、液晶や有機ELに代わる次世代ディスプレイ技術「量子ドット」が、実用化に向けて一歩前進しました。

シャープとシャープディスプレイテクノロジー、東京大学は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、発光スペクトル幅が狭くカドミウム(Cd)を含まない量子ドットと呼ばれる直径10ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)以下の半導体粒子に対し、電流を注入することで発光とRGB(赤緑青)画素のパターニングに成功したと発表しました。

次世代ディスプレイ技術として注目されている量子ドットは、発光効率が高く、粒子のサイズを調整することで発光する波長を調整制御できるため、色再現性に優れていることが特徴です。有機ELと同様に自発光型であり、発光したときのスペクトル(光の波長)の幅が狭いため、色の純度も高く、高色域のディスプレイを実現しやすくなっています。

こうした特徴から、これまでのディスプレイで利用されてきたカラーフィルターが不要となり、フィルターによる光の強さが損なわれず、より電力を抑えたディスプレイが可能となります。

また、一般的な量子ドット材料には人体に有害なCdを用いた半導体のため、欧州連合(EU)の定めるRoHS指令などにより規制されています。今回、このCdを含まない量子ドットをRGB全てに適用し、パターニングした画素の制作にも成功しています。

RGB画素のパターニングには高精細な修正回路の製造で用いられている「フォトリソグラフィ方式」(感光性の物質を塗布し、光を当てて露光させパターンを生成する技術)を採用。これによりディスプレイの大面積化に対応可能となり、スマホから4K/8Kディスプレイなどあらゆるサイズで利用されることでしょう。

今後も量子化ドットの高品質化に向けた基礎研究を推進していくとのこと。こうした技術において日本が先行することで世界的な優位に立てます。開発競争は厳しいですが、ヘッドマウントディスプレイのようにドットが認識できないレベルだとより没入感が増すので、早期の実用化に期待したいところです。

文 = 飯島範久

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