「音のメタバース」で観光地やエンタメを収益化、ソニーLocatoneの実績

ソニーが提案するSound ARのメタバースが体験できるモバイルアプリ「ロケトーン」。エンターテインメントや情報コンテンツなど現実世界に張り巡らせた音によるイベントを体験できるツールだ


ロケトーンアプリの立ち上げから2年。コンテンツも充実


2020年11月にロケトーンが立ち上がった当初、アプリにはソニーが内製したコンテンツが並んでいた。今は外部のサードパーティによるコンテンツも充実する。2022年12月初旬時点で35のチャンネルが開設され、計133のツアーが揃う(12月中にさらに増加)。ジャンルとしてはアトラクションから地方創生をテーマにした街コラボ、アーティストのファンコミュニケーションなどが柱になる。


ロケトーンを担当するソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 パーソナルエンタテインメント事業部 事業開発部の近藤博仁氏(左)と八木泉氏(右)

ロケトーンの開発チームが2022年に注力したことの1つは、Sound ARによる新しいエンターテインメントの創作に多くのクリエイターを巻き込むことだったと、八木氏は振り返る。秋には渋谷区観光協会と連携して「ロケトーン・クリエーター・コンテスト2022」を開催した。グランプリを受賞したクリエイター・寺田忠勝氏による「水を感じる。川の息吹を聴く街歩き」のほか、10組のファイナリストたちが制作したSound AR対応のコンテンツが、現在もスマホを片手に渋谷の街を歩きながら楽しめる。

今後はSound ARに対応するコンテンツの制作環境も整備される。ソニーのこれまで独自開発のSound ARコンテンツ制作ツール「Locatone Studio」を、一部のBtoBパートナーやクリエイターにベータ版として提供してきた。今後は一般公開が予定されており、実現すれば誰でも簡単にSound ARコンテンツを作って配信できる。


WebブラウザによりSound ARコンテンツの制作が行える「Locatone Studio」。プログラミングの知識は不要。マップ上にサウンドや画像のファイルを配置して直感的に「音のイベント」が配置できる

Locatone StudioはPCブラウザから利用できる制作ツールだ。アプリケーションの画面に表示される現実世界の平面マップ上にBGMやナレーションなどの音声や画像のファイル、AR写真撮影のポイントなどイベントを配置して、ロケトーンで楽しめるSound ARツアーを構成する。複雑なプログラミングの知識がなくても、誰でも直感的に扱えるツールだ。

ロケトーンにチャンネルを開設する東京国際工科専門職大学では、臨地実務実習として学生がSound ARのコンテンツ制作を手がける機会を設けている。同校から若いSound ARクリエイターが続々と排出されれば、同じカリキュラムをつくる学校も増えそうだ。
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編集=安井克至

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