モバイルからメタバースへ、広がるクアルコム「Snapdragon」の最新事情

米半導体メーカー大手のクアルコムはモバイルとARヘッドセット向けの新しい「Snapdragon」シリーズのチップセットを発表した

Snapdragon(スナップドラゴン)とはスマートフォンを動かす頭脳、あるいは心臓部でもあるチップセットの名称だ。米国の半導体メーカーQualcomm(クアルコム)が設計開発を手がけている。

クアルコムは毎年末、ハワイ・マウイ島にジャーナリスト / アナリストを集めて、Snapdragonシリーズの最新チップセットの発表会を開催している。コロナ禍を経て、約3年ぶりに世界各国から招待客が集まったイベントに筆者も参加してきた。

スマホからメタバースまで、広がるSnapdragonシリーズのチップセット


クアルコムのSnapdragonはAndroid OS搭載のスマートフォンやタブレットなど、現在は5G通信にも対応するモバイル端末向けのチップセットとして名が通っている。実は今、クアルコムはインターネットに常時接続できるモバイルPC、オートモーティブ、IoTデバイスなどさまざまなデバイス向けにSnapdragonシリーズのチップセットを展開している。

クアルコムはデバイスや用途に応じて最適な半導体の設計開発を行い、最先端のプロセスノードにより半導体を製造できるOEM企業と組んでチップセットをつくるファブレスメーカーだ。モバイル向けチップセットは主にGoogle(グーグル)のAndroidデバイスに採用されている。今回発表された最上位の「8シリーズ」の他に、ミドルレンジの「7シリーズ」と「6シリーズ」、エントリーの「4シリーズ」まで幅広いラインナップを揃える。

2022年の発表会でベールを脱いだSnapdragonは、次世代モバイル向け最上位のチップセット、ならびにテクノロジーとビジネスの両側から注目されている「メタバース」の仮想空間とつながる際に欠かせないメガネ型ウェアラブルデバイス向けのチップセットだった。

次世代AndroidスマホはAI性能が向上


モバイル向けの新しいチップセットの名称は「Snapdragon 8 Gen 2 Mobile Platform」CPU / GPUに高性能なAIエンジンを組み込み、5GモデムやWi-Fi、Bluetoothに対応する通信モジュールを一体化する。Snapdragon 8シリーズはその多彩な機能と高い省電力性能から、モバイル端末を手がけるメーカーのフラグシップモデルに採用されてきた。

最新のチップセットもまた海外の有力メーカーのほか、日本からはソニーとシャープがこれを採用するパートナーとして発表会で名前が挙がった。おそらく日本国内では来年の春夏に新しいSnapdragon 8シリーズを搭載する端末が発売されるだろう。

モバイル向けSnapdragonシリーズの採用は今のところAndroid OSを搭載する端末に止まっている。ライバルであるアップルはiPhoneに搭載するチップセットを自社で設計開発しているからだ。ただ、現時点ではiPhoneも5G対応のモデムチップはクアルコムから供給を受けているものと見られている。

毎年末にクアルコムのイベントで発表されるSnapdragon 8シリーズの特徴を俯瞰すると、翌年発売されるAndroid OSを搭載するモバイル端末のトレンドが見えてくる。


次世代のモバイル向けSnapdragonはAIエンジンの性能が飛躍する。米サウンドハウンド社とともに開発を進めるAI音声検索エンジンは、端末をクラウドにつながず単体で高速で正確な検索処理ができるようになるという
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編集=安井克至

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