モバイルからメタバースへ、広がるクアルコム「Snapdragon」の最新事情

米半導体メーカー大手のクアルコムはモバイルとARヘッドセット向けの新しい「Snapdragon」シリーズのチップセットを発表した


最新のSnapdragon 8 Gen 2はAIエンジンの推論処理の精度が向上する。そのメリットをサービスに落とし込むと、例えば一度に複数の言語による音声会話を自動翻訳してテキストに起こせるアプリが実現できるという。クアルコムは音楽認識検索アプリ「SoundHound」を提供するサウンドハウンドとの協業により、クラウドにつながずにデバイス上で検索処理を完結できる高度なAI音声アシスタントを開発している。イベント会場では、クアルコムの最新チップセットを搭載するスマホが自然に発話された複数のキーワードを含む検索フレーズを認識して、正確な結果を返すデモンストレーションが紹介された。

カメラ性能やゲーミング体験の飛躍にも期待


AIエンジンとともにカメラの性能も飛躍する。クアルコムが「セマンティック・セグメンテーション」と呼ぶSnapdragon 8 Gen 2の最新機能はその一例だ。静止画・動画の撮影時に被写体を最大8つのレイヤーに分解して、肌・衣服・背景の緑と空など、それぞれのオブジェクトに最適なスムージングや解像度アップを瞬時に行った後にベストショットを残す。


発表会で紹介されたクアルコムのチップセットによる「セマンティック・セグメンテーション」のデモンストレーション。動画・静止画の被写体を細かく分類して「肌をスムーズにする」など部位ごとに最適な高画質化処理をかける

Snapdragon 8 Gen 2では画像処理パフォーマンスが高速化し、負荷のかかるタスクの動作時に消費される電力が効率化される。モバイルゲーミングはその恩恵を大きく受ける。最新のチップセットにハードウェアのレイトレーシングエンジンが組み込まれることにより、コンピュータグラフィックスに「光」の効果がよりリアルに反映できるようになるという。

最新のSnapdragonのチップセットを搭載する端末は、もはや据え置きタイプのゲームコンソールに肩を並べるパフォーマンスを獲得したとも言われている。来年はゲーミング性能で競り合う、最先端のモバイル端末による競争がさらに過熱しそうだ。

軽くて高機能、省電力なARヘッドセットを実現するチップセット


クアルコムは2018年にメタバース体験に関わるデバイス向けのチップセットとして「Snapdragon XR」シリーズを立ち上げた。以降Meta(当時はFacebook)の「Oculus」シリーズや、日本でもNTTドコモとauが扱うサングラスタイプのARヘッドセット「Nreal Air」など話題の製品に採用されている。

今年、クアルコムはARヘッドセットの開発に特化した新しいチップセット「Snapdragon AR2 Gen 1 Platform」を発表した。新しいチップセットが次世代のARヘッドセットの開発に大きく貢献するポイントがいくつかある。


軽量・スリムなARヘッドセットの開発を後押しする「Snapdragon AR2 Gen 1 Platform」
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編集=安井克至

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