テクノロジー

2022.11.29 13:00

モバイルからメタバースへ、広がるクアルコム「Snapdragon」の最新事情


1つはスリム化と軽量化だ。プラットフォームをメインプロセッサとコプロセッサによるマルチチップ構成として、さらに重い処理はWi-FiによりペアリングするスマートフォンやPCなどホスト側機器に受け持たせることで、ヘッドセットがコンパクトになる。

クアルコムが蓄積してきたノウハウにより、チップセットの最大消費電力を1ワット以下に抑えられることも大きい。バッテリーパックの容量に対して駆動時間がより“長持ち”するデバイスを開発しやすくなる。さらにホスト側機器との接続がワイヤレスになることで、ARヘッドセットを装着するユーザーの負担も軽減されるだろう。


チップセットの消費電力が1ワット以下に抑えられることから、ヘッドセットの小型軽量化やバッテリーの長寿命化などさまざまな可能性が広がる

ナイアンティックがクアルコムのチップを採用するARヘッドセットを開発


クアルコムが開催した今回のイベントで、新しいSnapdragonのチップセットを搭載するARヘッドセットのプロトタイプやリファレンスモデルの展示はなかった。だが、ゲストとして招かれ米Niantic(ナイアンティック)から「アウトドア専用ARヘッドセット」をコンセプトに掲げるプロトタイプのイメージが紹介された。


ナイアンティックが発表した、Snapdragon ARシリーズを搭載する「アウトドア専用ARヘッドセット」のプロトタイプのイメージ

ナイアンティックにはヘッドセット端末を身に着けるユーザーの位置情報と体の向きを判定し、3D ARマップの中にオブジェクトの情報を正確に再現する「Lightship VPS」という、ARコンテンツを開発するための独自プラットフォームがある。今後ナイアンティックはハードウェアとソフトウェアの双方から、クアルコムと連携してゲームなどエンターテインメント向けARコンテンツを盛り立てていく。ナビゲーションや観光ガイドなどエンタープライズ向けのさまざまな展開も考えられる。

Snapdragon AR2のチップセットは、クアルコムが従来から密接に関わるパートナーであるレノボやNreal、OPPOなど海外の企業のほか、日本のメーカーはシャープ、NTT ONOQ(コノキュー)などが関心を寄せている。ハードウェアを身に着ける負担、バッテリーの問題が解消されることにより「メタバース」がいよいよ私たちの日常生活との距離を一気に縮める未来が遠くないことを感じさせてくれる。来年はモバイル以外でもクアルコムのSnapdragonの名前を見かける機会が増えそうだ。

連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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編集=安井克至

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