プラットフォーマーへ
──治験についてお聞かせください。一般的に新薬は
・Phase I:少人数の健康成人への投薬試験
・Phase Ⅱ:少人数の患者への投薬試験
・Phase Ⅲ:多数の患者への投薬試験
の3ステップで実行されます。DTxの治験における壁、重要となるポイントなどがあればお聞かせください。
やはり一番大きい壁は医薬品と同様でPhase Ⅲ、いわゆる検証的試験です。当然コストも時間もかかりますし、それをやる前の規制当局との議論も多く必要となります。
これについては市場全体として課題を感じている部分です。
治験業務は非常に労働集約的で、コストの大半が人件費。さらには日本の治験コストは欧米に比べて突出して高いと指摘されています。欧米に比べてバイオ領域への投資額が小さいにも関わらずそのような状況では、欧米との医療ギャップは広がるばかりです。
私たちがブロックチェーンを活用した臨床試験システムなどを展開しているのも、そういったギャップを改善し、迅速にPDCAを回せる土壌を作りたいと考えているからです。
DTx独特の壁で言うと、DTxは事例が少ないからこそ治験オペレーションが確立されていないという課題があります。
例えば医薬品の治験の場合は「プラセボ」という偽物の医薬品と本物の医薬品を患者・医者のどちらもが分かっていない状況で比較試験する手法が一般的に確立されています。
しかし、それをDTxでやろうとすると難しい。ゆえに私たちは自社で治療⽤アプリ開発プラットフォームを開発し、知財・ノウハウを蓄積しています。
──自社がDTxを開発されるだけでなく、プラットフォーマーとしての志向が強い印象です。その点について詳しくお聞かせください。
私たちはプラットフォームとして大きく3つ持っています。
1つめは治療用アプリを開発するためのプラットフォーム。
新しい治療用アプリを開発する際に、スクラッチでゼロから作るとコストと手間がかかるところを、モジュールベースで組み合わせてアプリをローコストで作れるシステムです。
2つめが医療ビッグデータ分析プラットフォーム。
DTxの価値の1つとして「データが生み出される」というものがあります。これまでは医療機関を受診した時にしか発生しなかった医療データですが、DTxによって患者が自宅にいる時も日々生み出されるようになります。
このビックデータは、将来的にデータ蓄積されることで大きな価値になりますので、我々はデータを蓄積し、分析・活用するクラウドサービスを提供しています。
3つ目がブロックチェーンを活用した臨床試験効率化プラットフォーム。
これはDTxに限った話ではなく、医薬品・医療機器全般に対して、臨床試験の効率化に貢献するプラットフォームです。
医療全体に貢献することを考えると、DTxはまだまだ小さな領域です。医薬品も含めた治験効率化全般にテクノロジーで貢献できればと思っています。