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2022.10.05 08:30

ファミマ社長、ファストリ副社長を歴任 澤田貴司が語る、名経営者の共通点 #1

ロッテベンチャーズ・ジャパン代表の澤田貴司(提供:DIMENSION NOTE)

ロッテベンチャーズ・ジャパン代表の澤田貴司(提供:DIMENSION NOTE)

2022年4月から新たにWell-being分野などを対象に、国内外のシードからミドルステージのスタートアップへ投資活動・事業支援を行うロッテベンチャーズ・ジャパン(ロッテホールディングスの100%出資CVC)。ファーストリテイリング副社長、リヴァンプ創業、ファミリーマート社長など華々しい起業・事業経営実績を持つ澤田貴司(さわだたかし)氏が代表に就任し、話題を集めている。

今回は澤田氏が考える起業家の素養、事業経営のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話中1話)


「現実・現場」を直視せよ


──さまざまな会社を起業し、経営されてきた澤田さんが考える、起業家にとって重要な素養とはなんでしょうか?

1つめは「強烈な情熱」。その事業を始めたい・やりたいという想いです。2つめは「顧客視点」。さまざまなステークホルダーの中でも最も重要なのは、対価の支払い元である顧客です。この顧客の立場に立って商品・事業を捉えることが大切です。3つめ、4つめは「仲間の共感」「取引先からの共感」。

1人、1社単体では、大きなことは決してなし得ません。情熱を持っていることに対して、ステークホルダーの共感を得ていくことが不可欠です。

最後、5つめとして挙げるなら「費用対効果」。投資に対してリターンが合っているのかという厳しい視点。時には冷徹な判断も求められます。私はこれまでに、とにかくたくさんの失敗をしてきました。そして失敗したときに都度反省するわけですが、その過程で出てきたものをまとめるとこの5つに集約されるのかなと思います。

──澤田さんはこれまで「レジェンド経営者・起業家」と呼ばれる方とたくさんお会いされ、仕事をしてこられたと思います。

伊藤忠商事在籍時にセブン-イレブンの買収案件で初めてお目にかかったのがイトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊さん。

日米のさまざまな店舗回りをご一緒する機会があったのですが、伊藤さんはどんな売り場でも常に細部までメモをとられていました。現場のリアルからファクトを掴んで改善しようとする情熱はすさまじいものでしたね。

商社マン時代、トレーダーとして電話1本だけで何億もの案件を売り買いしていた「現場が見えていない」私にとってはトップである伊藤さんのその姿勢を見たことが衝撃で、経営者として本当にかっこいいなと思いました。私もそんな人間、経営者になりたいと強く思った経営者の1人が伊藤さんです。

次にみなさんご存知の柳井正さん。

いまでこそ名経営者として誰もが知る存在ですが、私が柳井さんと初めてお会いした1997年頃は経営者としてはほぼ無名の方でした。柳井さんの仕事に取り組む姿勢はとにかく「現場第一」。

目標に向かって現場で起きている課題を整理し、潰して突き進んで行く。この愚直な繰り返し。柳井さんからはこの貪欲な姿勢を強烈にご指導いただきました。

このような偉人達からの学びの実践として、ファミリーマート社長時代には現場を知るためにお店を1000店舗以上訪問させていただき、いろんな方たちにお会いし、現場で起こっているさまざまなことを教えていただきました。

同じファミリーマートのお店でも、オーナーや店長によって売上が全然異なる場合があったり、極端な話、店長の機嫌ひとつでそのお店の雰囲気はガラッと変わるし、売上、退職率なども全然変わってくることを目の当たりにしました。

そういった経験も経て、あらためて現場の加盟店の方々がいかにモチベーション高く、幸せで、元気で商売できるようサポートをすることこそがファミリーマートの社長として最も大事な仕事だと強く思うようになりました。

共通するのは机上の空論・能書きではなく「現実・現場」を直視し、進むべき未来の道筋を示しつつ、目の前で起きている課題や近未来に起こるであろう課題を整理し、解決し続けることで、関係するステークホルダーの一人でも多くの方に共感をいただき、一緒になって前進してゆくことが本当に大事だということです。

名経営者と呼ばれる人たちはこの姿勢が一貫して凄まじく、私が強く憧れる部分でもあります。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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