自分にとっての「一流」を定める
──そういった一流の経営者とお会いする時に意識されていたことなどがあればお聞かせください。
「一流」の定義は人によって全く違うと思います。まず何を自分が「一流」と思うのか、どういう人になりたいかを自分の中で整理し、理解することが重要ではないでしょうか。自分がなりたい「一流」の定義が決まり、それを目指したいという情熱があれば、実際にその一流の世界を体現している人と会う機会を模索したり、実際お会いさせていただいたり、あるいは本を読んだり、手紙を書いてお会いしに行くことも出来るかも知れません。
私の場合は「小売業の業界でとにかく経営者になりたい」と伊藤忠時代に決意をしました。
なので、伊藤雅俊さん(イトーヨーカ堂)や鈴木敏文さん(セブン&アイ・ホールディングス)、藤田田さん(マクドナルド)、櫻田慧さん(モスバーガー)、荒井伸也さん(サミット)など、とにかく学びたいと思った経営者にバンバン手紙を書いてお会いしたいと嘆願書を出しました。そして幸運にも当時35歳だった伊藤忠の一サラリーマンの私に全員お会いしてくださいました。
「一流」と呼ばれる人達は「一流」になることを目的にしているとは思いません。それぞれ自分が成したい、達成したいことを明確に持ち、そのゴールに向かってひたすら愚直に努力した結果、色々な事業を成功させたのだと思います。
まずは自分が成したいことを明確化し、そのために学ぶべきことを整理し、それを体現している方たちからあらゆる手段を使って色々なことを必死で吸収することが重要だと思います。
──柳井さんのように飽くなき探究心で上を目指し続ける方もいる一方で、小規模の成功で満足してしまう起業家も多くいます。その違いはどこから来るのでしょうか?
起業家、経営者、あるいは社員の方であっても、とにかく自分がやりたいと思っていることを、やればいいんじゃないでしょうか。一定規模で満足してもいいし、飽くなき探究心で上を目指し続けてもいい。それは個人個人の自由であり、その方たちの人生観が違うのは当たり前なので批判されるべきことではないと思います。
つまるところ、素養の1つめに挙げた「何を成したいかという強烈な情熱」。経営者、個人を突き動かすのはこれなのだと思います。
柳井さんとは今も定期的にミーティングの機会をいただいていますが、彼の貪欲さは今も昔も本当に変わらないように感じます。誰よりもユニクロにコミットし、成長させたいと心から思い続けているように思います。
繰り返しになりますが、やりたいこと、人生観、ライフスタイルは人それぞれです。自分の情熱や思いに素直に向き合い続けることこそが、結果的に将来、名経営者と呼ばれるかもしれないゴールにたどり着く唯一の道なのではないかと思います。