むしろ、本当に発売するのか?と、やや失笑気味にヘッドフォンから口元に伸びるバイザーを見ていた人が多いのではないだろうか。正直に言えば、自分自身がこの製品を装着して街中を歩くイメージを持つことはできなかった。
しかし彼らはDyson Zoneを2023年1月、まずは中国から発売。3月になると英国、米国、香港、シンガポールでも出荷されるようになり、少しづつ出荷地域を拡大していく予定だ。日本での展開は”未定”とされているが、時期は確定していないものの出荷される見込みである。
ダイソンは2022年12月、最終仕様まで煮詰められていたDyson Zoneの体験と開発意図を伝える場が英国マルムズベリーにある同社最大の研究開発施設で設けられ、そこにグローバルの記者を集められた。
外観はヘッドフォン、しかし本質はモバイル空気清浄
ダイソンがなぜこの製品を開発したかは後ほど紹介するとして、まずは一通りの体験をした正直な感想を述べておきたい。
Dyson Zoneを装着して街中を歩くイメージを持てなかった筆者だが、現在はこの製品を東京で、あるいは海外への取材に出かけた際に、積極的に試したいと考えるようになった。加えていうならば、今後10年という単位で見たとき、この製品が実現しようとするコンセプトの延長線上にある製品が、世界中で使われるようになっているのではないかと、新しい市場開拓の可能性をも感じた。
ワイヤレスヘッドフォンとして捉えた時のDyson Zoneはノイズキャンセリング機能を備えた、歪み感が極めて低い透明感のある音質を引き出す製品だ。外音を取り込むトランスペアレントモードも備え、高音質ヘッドフォンとしての機能に不足はない。
詳細な音質評価は別の機会にしたいが、極めてドライで実直。まるで機材チューニングを行うための部屋で、モニタスピーカーを鳴らしているかのような音は、学術的な正しさと研究開発を重視するダイソンらしい音ともいえる。
しかしここで確認しておきたいのは、Dyson Zoneは外見こそヘッドフォンであり、極めて贅沢な素材やテクノロジを搭載した高音質オーディオデバイスとして設計されている一方、その本質は”モバイル空気清浄機”ともいえる部分に集約されているということだ。