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2022.12.07 10:30

収益減のTwitter、広告主はお得な新価格戦略でも戻る気配なし


ニューヨークタイムズは、マスクがツイッターを買収した影響で反黒人のツイートが1日あたり平均1282件から3876件へと3倍に増えたと報じている。反同性愛の投稿は2506件から3964件へと58%増となった。買収後の2週間で反ユダヤの投稿は61%増加した。加えて、オンラインプラットフォームを監視する世界的なシンクタンクThe Institute for Strategic Dialogue(ザ・インスティチュート・フォー・ストラテジック・ダイアローグ)によると、マスクがTwitterのCEOになって最初の12日間でイスラム過激派組織ISISに関連する450のアカウントが開設され、マスクがCEOになる前の12日間と比較して69%増加したという。

さらに、マスクが米ラッパーのカニエ・ウェスト(現Ye)のアカウントの一時停止を解除してから2週間も経たないうちに、ウェストはダビデの星にかぎ十字を絡めた画像といっしょにツイートした。Twitterはすぐさまウェストのアカウントを再び一時停止にした。

130億ドル(約1兆7805億円)の負債と毎年10億ドル(約1370億円)超の利払いを抱えているため、マスクはTwitterの収益を早く伸ばす必要がある。Twitterは過去10年間で黒字は2回だけと、収益アップは課題だ。Twitterの広告費に基づくインセンティブは最新の戦略だ。憎悪に満ちた投稿が増加しているにもかかわらず、マスクは広告主と何度も話し合い、Twitterがブランドにとって安全な環境であることを保証してきた。

しかし、広告主は魅力的な広告料金よりもブランドの安全性を優先させてきたという歴史がある。40年近く前、米テレビABCは北大西洋条約機構(NATO)とワルシャワ条約機構の加盟国との間での核戦争の影響を描いたテレビ映画『The Day After』を放映した。視聴者数は推定1億人とテレビ映画としては史上最高の視聴率を記録している。宣伝や高視聴率にもかかわらず、その内容のためにABCが販売できた広告時間は2時間の映画に典型的な量をはるかに下回る、わずか10分だった。

21世紀に目を向けてみると、ブランドの安全性は最重要視され続けている。ラッシュ・リンボーとドン・アイマスのような人気のラジオ番組パーソナリティは、放送で不適切な発言をしたために広告停止を経験した。 最近では、ケーブルテレビで最高視聴率を誇るFox News(フォックス・ニュース)の複数のパーソナリティによるソーシャルメディアへの投稿や放送中の発言を理由に、多くの広告主がボイコットした。他にも多くの例がある。

広告料金は視聴者数ではなく、広告主の需要に基づいている。Twitterが広告代理店やそのクライアントの要望に応えるまでは、いくら広告費をまけても広告主の戦略は変わらないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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