いわゆる「ホットサターン(土星に似た高温の惑星)」の1つであるボカプリンズは、2022年の夏にJWSTが科学観測を開始した直後に調査されたが、このほどその惑星の完全な化学プロファイルが解明され、いくつか特異な事実が発見された。
惑星の微かな光をスペクトルに分解することで、研究者は水、二酸化硫黄、一酸化炭素、ナトリウム、カリウムなど原子、分子、化学物質の存在を示す兆候を見ることができる。惑星はオレンジ・青色の不鮮明な大気に覆われ、その下には雲の帯があると考えられている。
ウェッブおよびハッブル宇宙望遠鏡のいずれも、これまでにこの惑星大気の含有物を発見したことがある。しかし「フルメニュー」は初めてだ。今回のデータは、惑星の雲が「一様なブランケット」ではなく分割されている可能性も示している。
これは、小さくて岩石質でより地球に似たトラピスト1系にあるような惑星の探究を切望してきた科学界にとってすばらしいニュースだ。
WASP-39bの大気組成。左上:NIRISSのデータによるカリウム(K)、水(H2O)、一酸化炭素(CO)のフィンガープリント。右上:NIRCamのデータが示す顕著な水の痕跡。左下:NIRSpecが示す水、二酸化硫黄(SO2)、二酸化炭素(CO2)および一酸化炭素(CO)。右下:追加のNIRSpecデータが明らかにした上記の分子すべておよびナトリウム(Na)(NASA, ESA, CSA, J. OLMSTED [STSC])
「これは光化学反応(星の光のエネルギーによって起こされた化学反応)の確固たる証拠が見つかった初めての事例です」と英国オックスフォード大学の研究者でWASP-39b大気の二酸化硫黄の起源を説明する論文の主著者であるシャン・ミン・ツァイはいう。「これはこのミッションで系外惑星大気を理解する上できわめて有望な前進だと考えています」
地球に似ているボカプリンズだが、確実に地球とは違う。ボカプリンズは奇妙な惑星だ。親星の非常に近くを周回し、(地球と月のように)自転と公転が同期しているため、一方の側が超高温に、他方が超低温になっている。実際この惑星は水星と太陽の距離より8倍親星に近いが、直径は木星の1.3倍だ。
「私たちはいくつかの機器を組み合わせて使用することで、この系外惑星を観察し、JWST以前には不可能だった広い範囲の赤外線スペクトルや多数の化学物質のフィンガープリントを利用することができました」とカリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学者で、この最新研究に参加して調整役も務めたナタリー・バタルハはいう。「このようなデータは、この分野の考え方を大きく変えるゲームチェンジャーです」
澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。
(forbes.com 原文)