W杯開催国のカタールがツイッターに520億円を出資した理由

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バイデン大統領は、11月9日の記者会見で、イーロン・マスクによる440億ドルのツイッターの買収にサウジアラビアやカタールの政府機関が関わったことが、米国の国家安全保障に対する脅威になり得ると発言した。

サウジのアルワリード・ビン・タラル王子はマスクのツイッター買収に19億ドルを投じ、ツイッターの2番目の大株主になった。さらにカタール投資庁(QIA)も、ツイッターに3億7500万ドル(約520億円)を出資している。

民主党のクリス・マーフィー上院議員は、マスクがツイッターの買収にあたり、外国資本の協力を仰いだことが国家の安全保障に関わる問題だと述べ、対米外国投資委員会(CFIUS)に審査を要請した。

シンクタンクの「ブルッキングス研究所」のサンジェイ・パトナイク(Sanjay Patnaik)も、カタール政府がツイッターの個人データにアクセス可能になった場合、米国に国家安全保障上のリスクをもたらす可能性があると述べている。

「たとえ少額の投資でも、カタール政府がツイッターのポリシーに何らかの影響を及ぼす可能性がある。さらに、米国人のデータにアクセスする可能性があるならば、CFIUSが調査を行うことは十分あり得る」と彼は述べた。

カタールは11月20日に開幕する2022年FIFAワールドカップの開催地であり、人口300万人の同国には間もなく、100万人を超えるサッカーファンが押し寄せる。2010年に大会の開催権を獲得したカタールは、移民労働者の過酷な労働環境や、政府の強権的なメディアの取り締まりで世界の批判を浴びている。

「カタールのツイッターに対する投資の裏側には、おそらくさまざまな思惑がある」とパトナイクは言う。「その一つは、政府のプロパガンダを広めることだ。さらに、ツイッターを通じて個人データにアクセスできれば、大会のポリシーに影響を与えることも可能だ」

一方で、ウェブドッシュ証券のアナリストのダン・アイブスは、「カタールにとっては、ワールドカップ前の絶好のタイミングでマスクによるツイッターの買収が成立した」と述べている。

マーフィー上院議員は、「アルワリード王子とカタール政府は、ツイッターを利用して政府を批判する人や、人権活動家を抑圧する可能性がある」と指摘した。2020年にカタール政府は刑法を改正し、「虚偽または悪意のあるニュース」を放送または公表した場合、最高で5年の懲役刑を科すことにした。
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編集=上田裕資

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