8月以降、私自身、リチウム採掘、核融合、電池製造、炭素回収など、エネルギー転換に関連するさまざまな取り組みを行っている6社のCEOにインタビューした。そのうち2社はヨーロッパを拠点とする企業で、税制優遇措置などのIRA条項を利用しながら、米国市場に数十億ドル(何千億円)規模の進出を果たすことになる。金は金を呼び、IRAの3690億ドル(約50兆円)の新たな優遇措置や補助金が意図した効果を発揮していることに疑問の余地はない。
しかし、公平を期せば、米国の政権と議会がBILとIRAを通じて行ったことは、ヨーロッパのエネルギー移行モデルに大きく基づいている。21世紀の間に、EUと多くの欧州各国政府は、炭素と原子力を基盤としたエネルギーミックスから、再生可能エネルギー源をより基盤としたミックスへの移行を促進するために、独自のインセンティブ、補助金、規制措置を制定してきた。これはまさに、米国のBILとIRAに含まれる戦略だ。
この戦略が意図したとおりに機能し始めていることは間違いなく、この2つの新しい法律が対象とするさまざまなグリーンエネルギープロジェクトに、何十億ドルもの民間資本投資を引き寄せている。しかし、米国への投資の一部が欧州の犠牲の上に成り立っていることも間違いない。米国の新たな課題は、新しいグリーンエネルギー資源をいかに効率的かつ効果的に電力と輸送の両分野に統合するかということだ。これは大きな課題だ。
フォン・デア・ライエン委員長をはじめとするヨーロッパの関係者が表明した懸念は現実的であり、十分な根拠を持っている。この競争が激しい世界で、EUや欧州の各国政府は状況に対応する権利があり、間違いなくそうするだろう。プーチンの凶悪な戦争は、結局のところ、エネルギー安全保障は国家安全保障であり、すべての政府は自国の利益のために行動する権利だけでなく義務を持っているということを改めて証明したのだ。
(forbes.com 原文)