経済・社会

2022.12.05 16:00

ワールドカップ日本大躍進の裏で、日本警察が生んだ技「脱力ポリス」

NORHAFIS MOHD AMIN / Shutterstock.com

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日本中がサッカー・ワールドカップ(W杯)の日本チームの活躍に沸いている。開催地が中東・カタールのため、歓声は夜中や明け方に上がることになる。グループステージの開始時刻(日本時間)は第1戦ドイツ・22時、第2戦コスタリカ・19時、第3戦スペイン・28時だった。東京近郊の都市に勤務する知り合いの警官はドイツ戦の夜が当直勤務だった。

11月23日午後10時過ぎ、警官の当直室に掲げられたパネルのディスプレーに県警本部から、「110番入電」の連絡が映し出された。そして瞬く間に、連絡は次々に「続報」という形で積み重なり、ディスプレーはすぐに表示で一杯になった。110番をかけてきた場所はバラバラだったが、通報の内容は似ていた。

「マンションの隣の部屋から悲鳴が聞こえた」「通行人が奇声を上げている」。通報してきた人は口々に、凶悪事件の発生を懸念したという。通報してきた人たちはお年寄りが多いようだったという。

原因は、日本代表の前田大然選手が放ったシュートだった。ドイツ戦の前半8分、前田選手のシュートは惜しくもオフサイドの判定。日本中から悲鳴が上がったからだ。警察署から飛び出した警官たちが現場に急行すると、バツの悪い表情を浮かべた人々が恐縮しながら、「すみません、つい大声を出してしまいました」と謝った。

みな、試合を早く見たいので、警官たちに反発することもなく、丁寧に、しかし、素早く謝った。110番通報は後半30分に堂安律選手が同点ゴール、同38分に浅野拓磨選手が逆転ゴールを決めるたびに、繰り返されたという。

そして、東京や大阪の警官たちにはもう一つの仕事が待っていた。東京・渋谷や大阪・道頓堀での雑踏警備だ。日本勝利に喜んだ人々が街に飛び出してきたからだ。

最近は韓国・梨泰院で大規模な雑踏事故が発生したこともあり、警察関係者の緊張はいつにも増して高い。警察関係者らによれば、雑踏警備にはいくつかの要諦がある。人が流れるように往路と復路を別々に確保したり、密集しないように適度に人流を固まりごとに遮断したりする。

そこで、大事なのは「人々を興奮させないこと」だ。今回のW杯でも、モロッコ代表にベルギー代表が敗れると、同国の首都・ブリュッセルで暴動が起きた。人々が興奮して、警察や警備会社の言うことを聞かなくなると、雑踏警備は崩壊する。
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文=牧野愛博

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