経済・社会

2022.12.05 16:00

ワールドカップ日本大躍進の裏で、日本警察が生んだ技「脱力ポリス」

NORHAFIS MOHD AMIN / Shutterstock.com


人々を興奮させないための警察対応として近年、有名になったのがDJポリスだ。2013年6月のW杯アジア予選で、日本代表がW杯ブラジル大会出場を決めた後、渋谷の雑踏で混乱が起きた際、軽妙な語り口で、人々の興奮を和らげた。DJポリスは今回のカタール大会でも「活躍」が期待されている。
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警察関係者によれば、DJポリスの源流は、初詣の雑踏警備だという。千葉県警なら成田山新勝寺、警視庁なら明治神宮、神奈川県警なら川崎大師といった具合に、どの都道府県警も大晦日から元旦にかけて、初詣の雑踏警備に駆り出される。

そこで活躍したのが、機動隊の広報係だった。広報係は、声がよく通る警官が多く採用される。普段は、テレビドラマでよく出てくる、「抵抗しないで出てきなさい」「これから突入する」などと通告している人々だ。

ただ、初詣の雑踏警備は、数少ない「冗談を言って良い仕事」と位置づけられていたという。事前に、広報係の担当者たちが内輪で集まり、一生懸命考えて、つまらない冗談(おやじギャグ)をひねりだす。関係者の1人は「大笑いしてくれなくていいんです。相手が脱力するくらいの冗談で構わないんです」と話す。
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例えば、初詣客が必要以上に密集しないように、地点ごとにロープを張って、流れを規制する。規制された参拝客は、早く前に進みたいと思っていら立つ。そのままロープを上げれば、転倒者が出て将棋倒しになってしまうかもしれない。そこで、「初詣版DJポリス」は拡声機で呼びかける。「これからロープを上げま~す。今日は運動会ではありません。一番乗りしても賞品は出ません」。いら立っていた参拝客は苦笑いし、ゾロゾロと進み始めるのだという。

すぐに「フリーズ」と叫び、銃に手をかけかねない米国の警官と比べ、日本の警官は親切で優しいという点で定評がある。W杯の夜の110通報にしても、相手が希望すれば、通報した結果がどうなったのかを折り返して教えてあげるという。

日本代表の活躍で、奮闘した全国の警察官が大勢いたに違いない。W杯が終われば、もう忘年会のシーズンだ。今年は新型コロナウイルス対策での社会制限が緩和されたこともあり、酔客によるトラブルが増える傾向にあるという。お巡りさんの奮闘はまだまだ続くことになりそうだ。

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文=牧野愛博

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