そうした理解に基づく情報を利用して、科学者と製薬会社のコミュニティーは、まさに人々の命を救うワクチンの開発に成功した。米CBSニュースは、ワクチンは接種が開始されてからの1年間に、世界中のおよそ2000万人の命を救ったとする調査結果を伝えている。
ただ、科学とテクノロジーが進歩してきた一方で、いまだ多くの人々の命を奪っている新型コロナウイルスについては、答えの出ていない重大な問題や疑問が残されている。
後遺症について
感染した人の多くが、回復後も長く残る症状や、感染後に時間がたってから現れる症状に悩まされている。そうした罹患後症状、いわゆる「後遺症」としては、倦怠感、胸痛、咳、動悸、集中力の低下、筋肉痛、月経異常など、さまざまなものが報告されている。
後遺症の経過について明らかにしようとする研究は、継続的に行われている。だが、「感染者のうちどの程度の割合の人に後遺症が残るのか」など、いまだ不明点は多い。
米疾病対策センター(CDC)によると、感染によって入院が必要になった患者は30%以上が、感染後6ヵ月の時点でも、何らかの症状を訴えているという。一方、入院の必要がなかった感染者の症状、後遺症の発生率について長期的に追跡し収集したデータは、ほとんどない。
さらに、検査を受けず、感染を報告することもなかった多くの「感染者」は確実に、いずれの統計にも含まれていない。
また、検査で陽性判定が出てもほぼ無症状で、後になって症状が重くなる人たちがいる一方、重症化して集中治療室(ICU)に入るほどの状態だったにもかかわらず、まったく後遺症が出ない人もいる。これは、なぜなのだろうか?
そのほか研究者たちは、感染した変異株、例えばオミクロン株やデルタ株などによって、後遺症にどのような違いが出るかについても、明らかにすることができていない。株による後遺症の発生率の違いも、いまのところ不明だ。
メンタルヘルスへの影響
新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)の状態となったことで、2020年は人々の命を守るため、感染拡大を抑制するための対策として、ソーシャル・ディスタンスを取ることが求められた。