これにより、土壌から栄養を得る植物の仕組みが悪影響を受けていることが科学誌トレンズ・イン・プラント・サイエンス(Trends in Plant Science)に先日掲載された研究から判明した。フランスを拠点とする研究者らによると、特に二酸化炭素の水準の上昇により植物組織の窒素含有量が減少するが、この理由はまだ分かっていない。
植物の窒素欠乏は、人間が得る栄養やタンパク質の減少も意味している。仏国立農学研究所(INRA)に勤める研究の主執筆者アラン・ゴジョンは報道発表で「この現象により、人間の栄養に欠かせない2つの主な栄養素が影響を受けている可能性がある」と述べた。
ゴジョンは「1つ目は、窒素から構築されるタンパク質だ。二酸化炭素水準が高い状態で栽培された植物のタンパク質は20~30%低くなるため、食生活にタンパク質が豊富に含まれない発展途上国では大きな問題になり得る。2つ目は鉄分だ。鉄分不足は既に、世界で推定20億人に影響を与えている」と補足した。
二酸化炭素の水準が上がれば植物の光合成のプロセスは促進され得る。それでも、人間が非常に多くの温室効果ガスを出していることで、植物の栄養素や無機質は減るだろう。農産物や植物の大部分は大気中から直接窒素を得ることができず、土壌の細菌が作る硝酸塩やアンモニアに頼っている。
直接大気から窒素を得られるのはえんどう豆やレンズ豆、その他の豆類などマメ科植物と、アカウキクサと呼ばれる古代の植物のみだ。こうした植物は、細胞の中の窒素結合性の細菌を活用している。それでも鉄分やリンなどの無機質は、全ての植物が根を通して土壌からのみ吸収する。
トレンズ・イン・プラント・サイエンスの出版社セル・プレス(Cell Press)が出した公式発表では、研究の共同著者で仏国立科学研究センター(CNRS)に勤めるアントワーヌ・マルタンが「明らかなのは、米や小麦など世界中で使用されている主な農産物の栄養成分が二酸化炭素の増加により悪影響を受けていることだ。これは、食品の質や世界の食糧安全保障に強い影響を与える」と述べた。
(forbes.com 原文)