経済・社会

2022.12.02 13:00

中国デモ、ゼロコロナだけでなく独裁的支配と表現の自由の終わりも求める

安井克至

とはいえ、北京政府がゼロコロナ政策を完全に諦めるとは考えにくい。特に最も重症化しやすい高齢者のワクチン接種状況を考えると、すべての規制を一度になくすことは制御不能な状態を招き、破滅的な結果を招く可能性があることを当局は認識している。80歳以上の人口の約3分の1がワクチンを接種していない。

もし中国が新型コロナ規制をすべて解除したら、オミクロン株による感染の波はどのようなものになるだろうか。医学誌『Nature Medicine』に発表された論文によると、150万人超が死亡し、集中治療室に入る患者が15倍に増えると予測される。死亡者の77%はワクチン未接種の60歳以上の高齢者だ。

また、香港の実際のデータなどから得られた臨床エビデンスでは、2022年初めのオミクロン株による感染の波では、致死率が5%近くと驚異的に高いことが明らかになっている。

したがって、中国当局が何らかのかたちで現在展開するゼロコロナ政策の維持をあきらめる可能性は非常に低いと思われる。結局のところ、中国はこれまで新型コロナによる死亡者数を比較的低く抑えることに成功している。公式発表によると、中国では約5000人が新型コロナで死亡した。人口比でみると、米国の800分の1だ。多くの専門家が中国の公式集計の信憑性に疑念を抱いているが、中国が他のどの国よりも新型コロナを抑制していることは議論の余地がない。

同様に疑う余地がないのは、中国が個人の自由を制限するという極端な手段を取ることで、新型コロナを抑えてきたという事実だ。表向きは公衆衛生を守るために実施されている政策だが、そこには間違いなく独裁的支配の要素がある。

そして、中国政府は新型コロナの封じ込めだけでなく、人々の生活の他の面でも独裁的支配を維持するためにあらゆる手段を講じることは間違いないだろう。すでにその証拠が見られる。中国の主要都市では非常に多くの警官が配備されている。治安当局は人々の携帯電話をチェックし、デモにつながるような人々の行進を阻止するなど、さまざまな威嚇戦術を駆使している。これまでのところ、こうした措置によって先週末以降、抗議行動は鎮静化したように見える。共産党中央政法委員会はこの厳しい措置について「敵対勢力の浸透や妨害行為を取り締まるために必要だ」と主張している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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