ライフスタイル

2022.11.27 18:00

なぜ僕は「主人公が女優で警察官」の小説を書くことになったのか

稲垣 伸寿

人のアドバイスをすすんで採り入れる傾向の強い僕は、その筋の専門家に聴取に行くことが多々ある。

「真行寺弘道」シリーズの「ブルーロータス」を書いたときには、インドのカースト制度やヒンドゥー教について、近藤光博先生に話を聞きになんども日本女子大に足を運んだ。

また同シリーズの「ワルキューレ」では、フェミニズムについて社会学者の橋迫瑞穂さんに教えを乞うた。その後、「占いをまとう少女たち 雑誌『マイバースデイ』とスピリチュアリティ」「妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ」と立て続けに著作を発表され、気鋭の社会学者として注目を集めることになった橋迫先生は、実は、ミステリー小説やドラマにも通じていて、僕なんかよりも詳しいくらいだ。

僕は、「アクション」で初めて女性の刑事を主人公にしたが、「女性が主人公の刑事ものの特徴ってありますか」と橋迫先生に尋ねると、実に明瞭な答えが返ってきた。そして、「これは読んどきましょうよ」と課題図書まで指定してもらった次第だ。

コンピュータに関しては、庄司涉さんに教えてもらうことが多い。庄司さんは有名なプログラマーで、数多くの特許を取得し、グーグルマップやグーグルアースの基礎技術を開発した人でもある。また「アクション」の中のアイデアは庄司さんが話してくれたものだ(興味のある方はご一報ください。取り次ぎます)。

また、同作品にはゲイバーが出てくるが、新宿二丁目にある「台風39号」のマスターは映画やドラマ好きで、よく話し合う仲でもあるが、ゲイとして生きること、ゲイバーという場所が持つ意味合いについて意見をもらった。実はマスターからもらったアイディアも作中に盛り込まれている。

会話はたいてい録音する


会って話を聞きたいなと思いつつも、取りやめにしたケースもある。「アクション」のヒロインは刑事をやりながら、アート映画の監督と女優をこなし、実質的には制作会社の経営もしているという突拍子もない設定だが、監督・女優・映画会社経営の3つをやっている杉野希妃さんには話を聞きに行かねばとは思っていた。


杉野希妃

杉野さんと初めて会ったのは、経済産業省が主催して、映画のプロデューサーを集めた勉強会だったと記憶している。杉野さんは、これからプロデューサー業にも進出するぞという意気込みで参加していたまだ20代の女優だった。
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文=榎本憲男

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