「ガチ中華」の広がりを実感する「羊フェスタ2022」での羊肉料理の人気

「羊フェスタ 2022」に出店した「味坊」のブースは行列で1時間待ちという人気ぶり


そして、東京ではどこにどんな「ガチ中華」を出す店があるのか、地図に落としていくという作業を始めた。これは海外取材のときと同じことを日本でもやってみたという話でもある。

さらに、オーナーや調理人たちにも話を聞いた。「あなたはいつ頃来日したのか」「出身地はどこか」「なぜこの店を始めたのか」「どんな苦労があるか」「今後どうしたいのか」といったことを徹底的にヒアリングした。

そんなことを繰り返しているうちに、半年くらいして、大まかな東京の「ガチ中華」の見取り図が見えてきた。こうして見つけた珍しい地方料理をSNSに投稿すると、友人から「これ何?どこで食べられるの?」と聞かれたので、「じゃあ案内するから一緒に食べに行こう」ということになった。そもそも中華料理は大皿をいくつか並べて大勢でシェアして食べるものなのだ。

いわば、これが東京ディープチャイナ研究会立ち上げの経緯でもある。美味しい話題はみんなで共有しよう。その方がずっと「ガチ中華」の世界も見えてくるだろうと考えたのだった。


2015年に取材で訪ねた河南省の名物麺料理「烩麺(ホイミェン)」は羊肉と骨を煮込んだとろみのある白濁スープに平麺が入る

その後、コロナ禍が一時期落ち着いたのを見計らって、仲間を集めた食事会を開いた。そして、昨年「攻略!東京ディープチャイナ」という「ガチ中華」の案内本も上梓し、ウエブサイトを立ち上げ、SNSのグループも始めた。すると、見ず知らずの多くの方から「ガチ中華」に触れた喜びを伝える投稿が届くようになった。

昨年冬頃からはこれに関してメディアの取材を受けるようになり、「ガチ中華」が東京に出現した背景について、前述のような3つの事情を説明した。メディアの関心の背景には2022年が日中国交正常化50年という節目の年であったこともあっただろう。

いずれにしろ、冒頭の「羊フェスタ2022」でも感じた「ガチ中華」の広がりは、今後も高まっていくのは間違いないとも思っている。そして帰化した人も含めれば約100万人はいるといわれる日本で働く中国の人たちや、若いアジアの人たちとどう向き合うかを考えるうえで、「ガチ中華」はいくつもの有益な示唆を与えてくれる題材であると筆者は考えている。

文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会

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