その賑わいは「日本人はいつからこんなに羊を食べるようになったのだろう」と会場関係者も驚くほど。イベントの主催者である「羊齧(ひつじかじり)協会」の代表を務める菊池一弘さんは「羊食がさらに一般化した実感を得た羊フェスタだった」と話す。
ガチ中華の羊肉串が2日で8000本
2014年から始まった同イベントについては、約1年前、筆者も本コラムで紹介したことがある。そのときは、羊肉を食べる「羊食」の普及というユニークなテーマを掲げて長く活動してきた菊池さんは、羊食がブームから定番になったと語っていた。
今回、日本人の羊食に対してこれまで以上に手応えを感じたことを菊池さんは次のように語る。
「今回の羊フェスタはこれまでと大きく違いました。まず来場者がコロナ前の2019年に比べて圧倒的に多かった。アンケートによれば、来場者の年齢層の中心は20代から30代で、カップルや家族連れの多さが目につきました。
以前のフェスタは一部の羊肉好きや美食家が集まるイメージでしたが、今回は若い世代を中心に、普通の人たちがカジュアルに羊肉料理を楽しんでいた。羊の価格は2020年に比べて上がったこともあり、来場者の減少も考えられましたが、そうはなりませんでした」
「羊フェスタ2022」の会場には若い世代が多く来場した
そして、その背景には「保存技術の進歩で、羊肉独特の臭みが抑えられたこと」「日本人が多様な肉の味わいを楽しむようになったこと」があると菊池さんは付け加える。
「羊フェスタ2022」の会場には、北海道のジンギスカンをはじめ国内の羊料理レストランや、アメリカやオーストラリア、ニュージーランド、ウェールズなどの羊肉輸出国などのブースも並んでいたが、なかでも長蛇の列となっていたのは、千代田区神田にある中国東北料理&羊料理の店「味坊」のブースだった。2日間で羊肉串が8000本近く売れたという。
2000年1月にオープンした同店は、今日の「ガチ中華」のトレンドを牽引しており、多くの日本人客にも愛されている名店である。
また先ごろ、その「ガチ中華」はユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされており、ブームも本格化している。「ガチ中華」の面白さや楽しさを多くの人たちと共有できるようになったことは、羊フェスタの会場でお声かけいただいた人たちと話をしていても実感した。