Photoshopを作った会社がやるべきこと
AIなどの力で誰でもクリエイティブになれるのは、とてもすばらしいことだ。勉強が必要な作業なしに思い描いたイメージをカタチにできることはすばらしい体験であり、イメージを共有できるということでもあるため新たなコミュニケーションやクリエイティブもそこから生まれてくる。若者を中心に、スマホの画像加工アプリや動画アプリでSNSでバズる作品が続々と投稿され、みんなそれを楽しんでいる。
しかし、クリエイティブの敷居が下がる「民主化」には負の側面もある。簡単に画像を思い通りに修正したり、作るれるということは、偽情報も簡単に生み出せるということでもある。耳目を集めることも念頭において作り出された偽情報やフェイクニュースはSNSなどを介してあっという間に世界中に広がり、混乱を招く。たとえおもしろおかしくという意図であった自然災害に関する偽情報は人命を危険にさらす可能性があり、選挙に関するフェイクニュースはその後の世間に大きな影響を与えてしまう。
そこでAdobeは、オンラインの信頼性と透明性を高め、誤報やフェイクニュースに対抗することを目的としたコンテンツ認証イニシアチブ(CAI、Content Authenticity Initiative)を設立している。このCAIのソリューションはデジタルコンテンツに帰属情報を添付できるようにし、そこに含まれる事実や帰属などの情報の透明性を提供するものだ。来歴記録機能に基づくもので、写真データであれば、いつ誰がどのカメラで撮影したのかという情報をいつでも確認できるようになる。出自が明らかになれば、その画像が誤報やフェイクニュースのものなのか、判断できるようになる。
CAIに関する具体的な動きとして、CAIならびにC2PAに加盟した初のカメラメーカーとしてニコンが同社カメラへの来歴記録機能の実装を発表。Adobe Photoshopは、Adobe Creative Cloudを契約しているすべてのユーザーは、写真データの帰属情報と来歴情報を添付して作品を書き出せるようになるコンテンツクレデンシャル機能を利用できるようになっている。現在、CAIは設立以来、800以上の企業・団体会員を擁している。
ニコンはC2PA規格を参照してCAIと共同で開発した来歴記録機能を搭載した参考モデルをAdobe MAX 2022で展示
AIを活用したクリエティブの民主化とCAI設立などによる誤報やフェイクニュースへの対抗。Photoshopを生み出した企業として、Adobeは拡大と抑制を両立させている。