ビジネス

2022.11.18 08:30

ブロックチェーンはカーボンクレジット市場をどう変革させるのか?

井関 庸介

最大効果のためにブロックチェーンを「正しく」使う


このように、ブロックチェーンはカーボンクレジット市場の効率化に向けて非常に有効な武器となりうる。しかし、闇雲にブロックチェーンを使えばいいのかというともちろんそうではない。例えば、NFTではなく、ファンジブル(代替可能)なトークンとしてカーボンクレジットトークンを発行するプロジェクトも出てきているが、これは根本となる「質の差別化」を解決することが難しいどころか、逆にこれを利用して低質なクレジットの流通を促進してしまいかねないリスクも伴う。

また、そもそも基盤となるブロックチェーン自体がマイニングなどで取引承認のために大量のカーボンを排出していたら元も子もない。そこで、このようなユースケースにおいては特に基盤となるブロックチェーン自体の「サステナビリティ」度合いが重視される。

例えば、XRPレジャーにおいては、もともとマイニングを使わない分散型の取引承認の仕組みを採用しているため、ネットワークの電力消費量はビットコインの12万分の1であるといわれている。さらに、カーボン排出の推定量に対して、カーボンオフセットがされることによって、2020年に主要ブロックチェーンの中で初めて脱炭素化に成功した。

このように、ブロックチェーンには、カーボンクレジット市場の課題を解決する大きな可能性を秘めている。そしてこれは今、現在進行形で起こっている「実用的NFT」のほんの一例に過ぎない。

日本では投機的なNFTが加熱したことによって、「ブームは過ぎた」とか「結局、投機に過ぎなかった」などと顔をしかめる人が多い印象だが、じつは世界では静かに着実に「実用的NFT」が実装され、世界にインパクトをもたらし始めている。このような現実に注視して、日本が乗り遅れることがないことを祈るばかりである。

文=吉川絵美

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