ハワイ州マウナケアのケック天文台で観測された不思議な画像は、この天文台の最新観測機器Keck Planet Finder(KPF、ケック惑星ファインダー)の「ファーストライト」(新しい観測機器の性能テストのための撮影)から生まれた。KPFは2023年春以降、地球外生命の探索に革命を起こすことが期待されている。
なぜ巨大惑星のよく知られた「雲の帯」と「大赤斑の渦」ではなく、カラフルな線の集まりなのか? KPFは今や世界最先端の可視光波長の分光計(スペクトルメーター)だ。
天文学は光の研究に他ならない。分光計は物体から出る光を虹のようなスペクトルに分解する。天文学者はそれを使って恒星や惑星の大気中の気体や化学物質を発見できる。その中には惑星表面に残された「バイオシグナチャー」と呼ばれる生命の痕跡があるかもしれない。
今回得られた画像は、門外漢にとってはすぐに興味を引かれるものではないが、地球外の生命探索においては驚くべき価値を持つ可能性がある。恒星を回っている地球サイズの惑星は、その小ささゆえに検出が著しく困難であり、だからこそケック惑星ファインダーはビッグニュースなのである。
太陽に似た恒星のおよそ5つに1つは表面に液体の水が存在できるくらい温暖な、いわゆる「ハビタブルゾーン」の中に地球サイズの惑星を有している。
「私たちは、天の川銀河の中にある地球以外の惑星を本当に理解する最初の世代です」とケック天文台のKPF担当副サイエンティストのシェリー・イェーは話す。
ケック惑星ファインダーは10年近く構想段階にあった。「KPFの最初の天文スペクトルを見たことは感動的体験でした」とKPFの主任研究員でカリフォルニア工科大学の天文学教授アンドリュー・ハワードはいう。「この機器を使って系外惑星の豊かな多様性を研究し、それらがどうやって生まれ、どうやって現在の状態へと進化したかの謎を解き明かすのが大いに楽しみです」
ハワイ島マウナケア山頂にある、(左から)すばる、ケックI、ケックIIの各望遠鏡(imageBROKER/Erich Schmidt/Getty Images)