新しい望遠鏡と天文機器が利用できるようになると、天文学者はさまざまな「ファーストライト」画像を使って、その能力のテストとデモンストレーションを行う。冒頭の木星のスペクトル画像もその1つで、科学的価値よりも、技術的純度を見せるために公開されたものだ。撮影されたのは2022年11月9日で、他にもペガスス座51番星と呼ばれる恒星のスペクトルも撮影された。この星は1995年に発見された太陽類似星を周回する初の(系外)惑星、ペガスス座51番星bのホストでもある。
ペガスス座51番星bは「ディミディウム」とも呼ばれ、発見者であるミシェル・マイヨールとディディエ・ケローは2019年にノーベル物理学賞を受賞した。それ以降、5000個以上の系外惑星が発見されている。ペガスス座51番星bは、いわゆる「ホット・ジュピター」(木星に近い性質をもつ系外惑星)に分類されるが、ケック惑星ファインダーは、地球に似た惑星を驚くべき精度で観測することが期待されている。
「過去20年の系外惑星発見ブーム以前、私たちは宇宙にどんな惑星が存在するのかも、私たちの太陽系や私たちの地球がありふれたものなのかどうかもわかっていませんでした」とイェーはいう。
新しい望遠鏡のスペクトルは、ドップラー効果を用いてホスト星の経時的な視線速度を測定するために使われる。恒星の動きは、それを周回する惑星の引力を明らかにする。軌道に惑星が存在すると恒星はゆらぐ、なぜなら惑星は恒星の重心とは異なる共通重心を周回しているからだ。
ケック惑星ファインダーはこの星のゆらきを観測し、天文学者はそれを測定して周回する惑星の質量と密度を推測する。卓越しているのはその類を見ない精度であり、ホスト星に小さな「ゆらぎ」しか起こらない低質量の惑星も観測することができる。この新しい機器が完全に稼働し始めれば、恒星の秒速わずか30センチメートルのゆらぎも検出することができる。これは現在使われているどの類似機器よりも約10倍強力だ。
澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。
(forbes.com 原文)