「天文学を営利事業」にするロンドンの宇宙関連スタートアップBSSL

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Blue Skies Space Ltd.(BSSL)は、近々「世界初の商用科学衛星データを提供する会社」になるという宇宙事業スタートアップだ。同社が、ロンドンの金融街はずれの目立たない脇道に最初の拠点を構えると誰が想像しただろうか。

BSSLは民間と公的資金を組み合わせた独自の方法で、初の低地球軌道衛星の最終設計・建設段階を準備している。また、NASAや欧州宇宙機関(ESA)から直接資金提供を受けているミッションとは異なり、BSSLのモチベーションは「科学としての天文学」だけではなく「営利を追求する天文学」だ。

世界の15の組織が、BSSLにとって2番目となるより大きい衛星プロジェクト「Twinkle(トゥウィンクル)」への参加を表明している。この低軌道衛星は、太陽系外惑星の大気や、太陽系内の天体のスペクトルを観測する。Twinkleミッションに参加するべくすでに早期投資を行った15の組織の中には、オハイオ州立大学、英国のカーディフ大学およびベルギーのリエージュ大学が含まれている。

「画期的なのは、これらの大学にプロジェクトに対して先行投資してもらい、プログラムを実現する科学チームの一員になってもらえることです」だと、BSSLのCEOで宇宙物理学者のマーセル・テセニが、ロンドン中心街から遠くない自称イノベーションセンター、IDEALLondonの会議室で私に話した。

テセニは、2014年に事業を開始したこのスタートアップを、小さな中堅企業だと表現する。現在わずか12人の社内チームがIDEALondonのコワーキングスペースを共有している。

しかし同社はすでに天文学コミュニティの信用を勝ち取っている。おそらく、共同創業者の3人がユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンですでに実績をあげている研究者であることが理由の1つだろう。

欧州委員会、欧州宇宙機関、英国宇宙庁および英国政府機関であるInnovate U.K.から資金提供を受けているとテセニはいう。他にエンジェル投資家や友人、家族も出資している。

そしてもしBSSLが成功すれば、これは衛星を打ち上げそれが生み出すデータのサブスクリプションを販売することで利益を上げるという天体観察新時代の前兆だ。世界の公共、民間の大学や研究機関に観測時間を売ることも事業計画の一部だ。
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翻訳=高橋信夫

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