理由は、新型コロナウイルス感染症の長引く後遺症だけではなく、新型コロナで平均寿命が劇的に低下したことにある。
米疾病対策センター(CDC)の新たなデータからは、米国の平均寿命が2019~21年の間に計2.7年短くなり、76.1歳になったことが分かった。これは、1996年以降最低の数字だ。
痛ましいデータはこれだけにとどまらない。特定の人種や民族集団の平均寿命が、他の集団よりも大きく影響を受ける状況が続いているのだ。
米国は世界で最も裕福な国であるにもかかわらず、平均寿命は先進国の中でも特に短い。世界銀行のデータによると、米国は新型コロナウイルス感染症流行下での平均寿命の低下幅が先進国でも特に大きかった。
日本の新型コロナウイルス感染症による死者数は10万人当たり36.73人だが、米国では10万人当たり324.25人だった。
しかし、平均寿命が短くなった国は米国だけではない。科学誌ネイチャー・ヒューマン・ビへービア(Nature Human Behavior)に今年掲載された調査によると、平均寿命がコロナ禍前の水準に戻った国は、世界でもベルギー、フランス、スウェーデン、スイスの4カ国のみだ。
研究者らは、期間生命表と呼ばれる技術を用いて平均寿命を計算した。この技術は、仮説上の乳児10万人に対し、乳児の生涯のそれぞれの年に、2021年に実際の人口で観測された死亡率を適用するものだ。
こうして作られたデータは、2021年に実際に生まれた子どもの平均寿命ではなく、平均寿命が特定の時点でさまざまな年齢集団にどう当てはまるかを示している。
米国の平均寿命は、1918年のインフルエンザの流行と第2次世界大戦、HIV危機を除き、過去100年で少しずつ伸びてきていた。
新型コロナの流行は、こうした進歩の大半を失わせてしまった。米国で2020年と2021年に平均寿命の変化をもたらした死因全体において、50%以上は新型コロナウイルス感染症に直接関連していた。
麻薬の過剰摂取を主な理由とした不慮の損傷も、平均寿命の変化に寄与した死因の15%を占めた。他の原因としては、心臓病や慢性肝疾患、自殺による死者の増加もあった。
新型コロナ関連の心的外傷後ストレスの影響も軽視できない。米国では2020年、麻薬の過剰摂取による死者数が9万1799人に達し、その数は2020年3月から加速的に増え、2019年と比べると30%増加している。