2013年の創業以来、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去・軌道上サービスという前人未到の事業に取り組む一方で、宇宙空間におけるルール整備に努めてきた。
現在、宇宙業界の有識者として国際宇宙航行連盟(IAF)副会長、宇宙世代諮問委員会(SGAC)アドバイザリーボード、英国王立航空協会フェロー(FRAeS)などの職務を兼務。21年まで世界経済フォーラム(ダボス会議)の宇宙評議会共同議長を務めたほか、22年の国連世界宇宙週間(World Space Week)の名誉議長に就任している。
岡田が語る、国際的なルールづくりに深く関与していくために必要なこととは。
国際標準などのグローバルなルールメイキングでは、世界が注目するようなイノベーティブな技術をもつことに加えて、2つ大事な要素がある。1つ目は国際的なポジションだ。ルールをつくる場は業界ごとにたくさんあるが、ただオーディエンスとして参加しているのではあまり意味がない。
議長や作業グループの長など発言力と責任のある役割を担う必要がある。米国や中国、欧州はもちろん、世界中の人たちが発言力を高めるべくしのぎを削っており、こういったポジション争いは熾烈だ。
もう1つは、局地戦だ。ルールづくりでは、大きな方針を決める前にも後にも、山ほどの細かい議論が行われる。そこで自社の技術思想を紹介し、世界の標準とはどうあるべきか明確でロジカルに伝え、徐々に仲間を増やしていかねばならない。これには膨大な準備や労力を要する。
特にリソースのないベンチャー企業にとって負担は大きい。当社では現在、政策や標準化の戦略を担う十数人のチームをもつが、初期のころは私が年間3分の2を海外出張に費やし、飛行機内で90泊以上を過ごして、ひたすらデブリ問題や宇宙のルール整備の必要性を伝え続けていった。苦労はしたが、次第に相手から呼んでもらえるようになり、自社の技術開発の進展とも相まって、耳を傾けてもらえる好循環が生まれていった。
日本人の根源的課題を克服せよ
日本が国際的なルールづくりで影響力をもてない背景には、組織的な戦略以前に、根源的な課題があると感じている。それは、日本人に英語力と論理的思考力、好奇心が足りないということだ。
海外のカンファレンスに行くと、すごく優秀な日本人エンジニアでも、英語が満足に話せないからか、片隅で座っているだけという光景をよく見かける。せっかくの国際的な会合なのに、日本人だけで集まっていることもしばしばだ。ボウリングのように、自分の順番が回ってきたら、ボールを転がせばいいと思っているかもしれない。