2018年10月、編集部が密着取材した岡田の海外出張での一コマ。ロンドンの王立航空協会で開かれた英国惑星間協会主催の学会でも、岡田は参加していた欧州連合内の政府、学界、産業界の要人らとひっきりなしにコミュニケーションを取っていた。
しかし、世界の議論の現場では、ラグビーやサッカーのように、自分でボールを取りに行かなければいけない。用意してきた資料を読み上げるだけでは意味がないのだ。野武士のように、現場の議論で自らの考えを論理的に伝え、人からの問いに対しても、解を導き出して論破する。これを英語で自在にやる必要がある。
一つひとつの議論が重要な勝負であり、会議の小休止の間にも、重要な人物たちと手を握って話ができるよう、神経を注がなければならない。無駄な時間は一寸たりともない。いかに自分の話を聞いてもらい、同意を得ていくかがルールメイキングのすべてだ。
そして、それを行うには、国際的なルールづくりの中心にいたいと思う強い気持ちが必要だ。自社の技術を語るだけでなく、わくわくしながら世界に飛び出す好奇心をもち、他者の技術のどこがすごいのか、業界のこの先をどう描いているのか、すべてを吸収するよう常に私は意識している。
日本企業が世界で戦うための最低条件を挙げるとすれば、まず、経営トップは英語を公用語にして働くことだ。もし経営トップが英語に自信がないのであれば、ナンバー2は英語ネイティブの人材にしたほうがいい。
他国に目を向けてみると、中国も2000年ごろは、英語を話せる人材は沿岸部大都市の一部だけだったように思う。しかし、この20年で様相は大きく変わった。いま国際的な場に参加する中国人は、全員が流暢に英語を操っている。日本人にそれができない理由はないはずだ。
岡田光信◎アストロスケールホールディングス創業者兼CEO。1973年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒業。米パデュー大学クラナートMBA修了。大蔵省(現財務省)主計局、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ターボリナックスなどを経て2013年より現職。