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2022.11.08

ハワイで夢の「出稼ぎ」生活は可能か? 円安の恩恵狙い

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つまり、ハワイでは日本よりも世帯収入はずっと高いが、それ以上に生活費が高い。多くの住民は、貯金どころか、現地で「快適に暮らすために十分な収入」を得られていないことがわかるだろう。

日本人が海外に移住して、現地での生活費が高かったとしても、それを十分に賄うだけの収入を得られれば、貯金もできて「出稼ぎ」はうまくいくかもしれない。でもハワイの場合は、出稼ぎ移住しても、現地での生活だけで一杯一杯になると容易に予想できる。

ハワイの生活費が高い要因


この要因は、ハワイの物価高に他ならない。特に人々の生活を圧迫しているのが、住居費だ。例えば、オアフ島の一戸建て住宅の販売価格(中間値)は110万ドル(約1億6000万円)、日本のマンションにあたるコンドミニアムでも50万ドル(約7300万円)はする。おまけに、昨今のアメリカの金融政策で、30年の住宅ローンの金利は6%を超えている。これでは、庶民は簡単にマイホームを購入できない。賃貸であっても、スタジオ(日本のワンルームに相当)の家賃は月1600ドル(約23万円)、1ベッドルーム(日本の1LDKに相当)は2000ドル(約29万円)近くになり、収入の大部分が家賃で消えていく。

そのほか、水道光熱費の高さも無視できない。ハワイの一般家庭における平均の電気料金は342.21ドル(約5万円)と、全米一の高さだ。ハワイではキッチンを含めオール電化であることが一般的であるが、それにしても高額であると言わざるを得ない。しかもロシアのウクライナ侵攻による原油価格高騰のため、オアフ島では今後10%、ハワイ島やマウイ島では20%の電気料金アップが見込まれているという。

食料品を含めて、ほとんどのモノが米国本土から輸送されているハワイでは、どうしても値段が高くなる。そのため、多くのモノの値段が跳ね上がることになるのだ。さらに、アメリカは医療費が高額であることも有名で、保険料を払っていたとしても、1回の簡単な診療で100ドル(約1万4000円)前後の自己負担が生じることも珍しくない。ハワイの生活費が全米一と言われているのは、このような理由がある。

ハワイは日本からの観光客や移住者が多いことから、旅行関係の仕事をはじめ、在住日本人を相手にした仕事など、日本人が求められる労働環境にある。しかも、アメリカ生まれの洋服や化粧品などは、日本よりも格安で購入できるものもあり、ハワイで生活する恩恵を受けられることもあるだろう。

しかし、「海外出稼ぎ」の観点で見ると、「貯金できるほど稼げる場所」と言うのは難しい。もし出稼ぎを本気で考えるのなら、現地での収入と生活費の両方を調べて、行き先について熟考することが必要不可欠だ。

連載:ハワイ経済・観光の今

文=佐藤まきこ

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