帝国データバンクの調査によると、2022年10月に値上げとなった食品は約6700品目に及び、2023年に値上げ予定であるものは早くも2000品目を超えるとみられている。そこで、にわかに脚光を浴びているのが海外移住だ。
「稼げる国」に移り住み、日本よりも多くの賃金を得ようというものだ。では、人気海外移住先の上位に入るハワイで、海外出稼ぎは可能なのだろうか。現地在住の筆者が紹介する。
20年以上も平均賃金が上がらない日本
国税庁の民間給与実態統計調査によると、2020年における日本の給与所得者の平均給与は433万円だった。この数値はここ20年以上で横ばいのままだ。1997年の平均が467万円だったが、もう20年以上もその数値を上回っていない。
一方、世界に目を向けてみるとどうだろう。例えば、アメリカで1世帯あたりの年収の中間値は、2020年が6万7521ドル(約990万円)だった。10年前の2010年は4万9276ドル(約720万円)、20年前の2000年は4万1ドル(約610万円)。多少のアップダウンはあるものの、確実に人々の収入が増えていることがわかる。※日本円は現在のレートで換算、いずれもインフレ調整前の価格。
「物価は上がっているのに賃金が上がっていない」。日本は、世界でも奇異に映るだろう。それに歴史的な円安が重なり、「稼げる海外」に目を向け出稼ぎするため移住する日本人も少なくないという。
海外で経済的に余裕のある暮らしを送りながら、余った収入は貯金にまわす。日本に帰国して日本円に換金するときは、円安の影響でさらに資産が増えるという目論見だ。実際に、美容師やすし職人など、日本では平均賃金が決して高くない職種であっても、海外では重宝されて高給が期待できる場合もあると言われている。
ハワイで「海外出稼ぎ」はできるのか?
海外出稼ぎで重要になるのが、「どこで」「何の仕事をするか」だろう。ここでは、海外移住先ランキングで必ず上位に入るハワイについて、考えてみたい。
米国国税調査の5年間の推定値から金融専門誌GOBankingRatesが出したデータによると、ハワイの世帯平均収入は、10万7348ドル(約1500万円)、中間値だと8万3173ドル(約1200万円)だ。全米平均の8万8607ドル(約1300万円)、中間値6万2843ドル(約920万円)と比較すると、ハワイの人々の収入はかなり高めだとわかる。日本の世帯平均収入は、2020年のデータで564万3000円なので、それと比べても多くの収入を得ていると言える。
その一方で、考えなければならないのが現地での生活費だ。ハワイはあらゆるモノの値段が高く、生活費もそれなりにかかる。上述のGOBankingRatesが、全米50州について、快適に暮らすために必要な生活費を算出したところ、ハワイは13万2912ドル(約1900万円)となった。これは平均収入より2万5000ドル以上も高く、世帯年収の中間値と比べると、5万ドル近くも差がある。