おそらく最も重要なことは、CEBRが述べているデジタルスキルは、データサイエンスやサイバーセキュリティのようなものではないということだ。その代わり、CEBRはスキルを3つのレベルに分け「エッセンシャルデジタルスキル(EDS)」と呼んでいるものをカバーしている。3つのレベルとは、(インターネットにアクセスできる)基礎的なスキル、(オンラインでの取引、購入、関与ができる)生活のためのEDS、(基本的なビジネスデジタルアプリケーションを使用できる)仕事のためのEDSだ。
これらのスキルは、遠隔医療の利用やオンラインバンキングの利用など、デジタルエコノミーを活用できるようになるため、価値がある。研究者は、基礎的なスキルと生活のためのEDSを改善するだけで、今後8年間で英国経済に約140億ポンド(約2兆3000億円)を追加することができると考えている。
「今日の英国で生産性と収益力を高めるための唯一最大の手段は、国民のデジタルスキルをいかに構築するかです。このデータが示すように、テクノロジーの活用、人材採用、英国各地からの人材育成に対するより包括的なアプローチは、経済全体に機会をもたらします」と、調査を委託したCisco UK & Ireland(シスコ・ユーケー・アンド・アイルランド)のチーフ・エグゼクティブ、デビッド・ミーズは述べた。「私たちは、デジタル技術のスキル格差だけでなく、今日の社会で必要とされるさまざまなレベルのスキルにどのように対処するかを考えなければなりません。そうすることで、デジタル社会が提供できる多くの教育、職業、経済的機会の恩恵を誰もが受けられるようになるからです」
幅広いインパクト
このような恩恵は、テクノロジー分野やデジタル化が進んでいる分野に限定されるものではない。実際、この調査では、従来からデジタル化の遅れている5つの分野(小売、建設、接客、公共事業、運輸)に特に焦点を当てている。
これらの部門はデジタル化が遅れているため、改善の余地が大きいだけでなく、大きな雇用を生み出しているため、多くの人々に影響を与える可能性がある。研究者らは、これらの部門とそこに属する人々を支援することで、2030年までに英国経済全体で約1320億ポンド(約21兆9200億円)の生産性向上が見込まれるとともに、経済的繁栄を国内により広く普及させることを目指す政府の「レベルアップ」政策にも大きく貢献できると考えている。
一国でこのような向上が可能であれば、EU全体でどのような向上が可能か想像がつく。ディープテックやサイバーセキュリティなど、より高度なスキルに注目することを妨げるものではないが、私たちは、より基本的なデジタルスキルも見逃してはならないだろう。
(forbes.com 原文)