宇宙に浮かぶ奇妙な「煙の輪」の正体がウェッブ望遠鏡の驚異的な画像で明らかに

ウォルフ・ライエ 140(WR140)の2つの恒星は、8年に1回殻状の塵雲を作り出す。NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で撮影(NASA/JPL-CALTECH)

8月にソーシャルメディアを困惑させた、ある星から放たれた奇妙な波紋のような煙の「squircles(角丸正方形)」が、2つの巨大な恒星が生み出した塵の雲であることが明らかになった。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影したWR140連星系の画像に対して、当初天文学者たちは困惑した反応を示した。曲線的な箱のような輪のような謎の構造が星を包み込む様子は、ただただ信じられなかった。

10月30日、Natureに掲載された論文と、Nature Astronomyに掲載された補足的研究は、WR140が塵の雲を強い恒星風によって宇宙に「押し出されている」画像を公開した。

その観測は、JWSTの初期公開科学(ERA)プログラムの事前準備研究の一環として、ケンブリッジとシドニーの大学が共同で実施した。

WR140は地球から5600光年離れたはくちょう座にある連星系で、巨大なウォルフ・ライエ星とさらに大きい青色超巨大星からなる。2つの星は互いに周回しあっており、青色超巨大星は扁平の強い楕円軌道で小さい星を回っている。約8年に1回両者が接近した時、殻状の塵雲が宇宙に放たれる。

JWSTの中赤外線機器(MIRI)が捕獲したのは(約20個)の加速する複数の塵雲で、それらがあの不思議な光景を作り出した。MIRIは最も波長の長い赤外線を検出するため、これらのダストリング(塵の輪)のように低温の物体でも見つけることができる。塵のほとんどは圧縮されて煤(すす)状になった炭素からなり、赤外線で光る。それぞれの塵雲は地球から太陽の距離の数千倍の長さに伸びる。

「まるで時計のように、この恒星はかたちを整えられた煙の輪を8年ごとに吹き出します。そこに書かれたすばらしい物理学を、風をはらんだバナーのように私たちが読めるようにしてくれます」と共著者でシドニー大学教授のピーター・トゥーシルが言った。「8年後にこの連星が自分の軌道に戻ると、もう1つ、同じものが現れて前回作られたバブルの中で宇宙に飛び出していきます、まるで巨大な入れ子人形のように」

WR140で起きた異常な現象は、星の光が物質にどのような影響を与えるかを観察する機会を与えてくれた。特に、星の光が物質を加速させるという、非常に珍しい現象を観察することができる。

ウォルフ・ライエ星はもっとも巨大な恒星の種類であり、天の川の中でわずか500回しか見つかっていない。存在する時間はわずか数百万年間(宇宙時間ではほんの一瞬)で、寿命が尽きる時には激しく爆発すると考えられている。「このような観測をずっと簡単に地球で行えるようになったことで、ウォルフ・ライエ星の物理特性の世界への新たな扉が開かれました」とJWSTの研究を率いるライアン・ローはいう。

澄み切った空と大きな瞳にに願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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