地球観測×AIで貧困や難民問題の支援へ
せりか:ジミーさんはNASAで火星探査プロジェクトに参画した後に、書籍の全文検索サービス「Google Books」でプロジェクト責任者を経てOrbital Insightを創業したと聞きました。
ジミー:はい。従来の人工衛星は防衛を目的としたものが中心でしたが、商用の衛星がどんどん打ち上がるようになりました。防衛のためだけではなく、投資や融資、保険の支払い、サプライチェーンの管理に活用できる衛星が増え始めるという転換点を迎えているように感じたのです。
印象に残っているのは、数年前に世界銀行と共同で実施した貧困地域をマッピングするプロジェクトです。衛星画像から貧困の度合いを評価する方法は様々。例えば、高層ビルの多さや農作物の収穫高を調べるのも良いでしょう。
せりか:なるほど!衛星が捉えた街や村の様子から、貧困の度合いを評価するんですね!
ジミー:私たちがスリランカの貧困地域をマッピングしたときは、自動車の台数をもとに貧困度合いを評価する方法が最も適していました。AIを使って自動車の衛星画像を分析したデータとスリランカの実際の貧困の度合いを比べると、自動車の台数と貧困の相関関係を導き出すことができました。人々はお金に余裕が出てくると、最初に車を買うようです。
従来国際機関などが行っていたプロジェクトでは、貧困の度合いを評価したマッピングなどは10年単位で行われるものでした。しかし、世界の変化は激しいので、10年に一度という頻度は「頻繁」とは言えませんよね。
せりか:衛星画像から正確なデータを得られるようになれば、半年ごと、あるいは3カ月ごとなど高頻度に更新できそうですね!最新のデータを使うことで可能になる貧困をなくすための施策は、より効果的なものになるのではないでしょうか。ところで、貧困地域のマッピングやパーム油のサプライチェーン管理など、こういったソリューションはどのようにして開発しているのですか。
ジミー:私がお客様にいつも決まって聞くことがあります。それは「この世界についてあなたが知りたいことは何ですか」という質問です。当社のソリューションは拡張性や柔軟性が高く、お客様の求める分析内容に基づいたソリューション開発を実現できることが強みです。そのため、お客様の要望を聞きながら、お客様と共同で開発している、とも言えます。
同時に、当社が社会貢献のために独自に開発するソリューションもあります。例えば、難民問題解決に関わるソリューションです。衛星データと匿名化された携帯電話のGPSデータを使うと、特定の都市からどのくらいの難民が次にどこに行くのか、おおよその見当を付けられます。この情報から多くの難民がいて支援が必要なキャンプや滞在先を把握できるのです。
せりか:GPSデータをそんなふうに使えるなんて驚きました!
(c)Orbital Insight
ジミー:Orbital Insightのミッションは、地球上で何が起こっているかを理解するための情報を意思決定者に提供することです。サプライチェーンの管理や資金運用、国の防衛、難民支援など、どのような分野の意思決定者にも、世界を良くするために私たちは貢献できます!