AI技術開発の第一人者が語る「宇宙の目」の貢献とは【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#12】


気候変動や環境問題の解決に貢献する衛星が続々と登場


せりか:近年は日本においても、気候変動への関心が高まってきたように思います。ジミーさんはシリコンバレーにいらっしゃると聞いていますが、ジミーさん自身も気候変動や環境問題への意識の高まりを感じることはありますか。

ジミー:そうですね。人々は気候変動の危険を強く意識するようになってきていると思います。カリフォルニアでは山火事が多発して、地球温暖化の影響を強く感じさせられます。


(c)ワープスペース

消費財の最終消費者がサプライチェーンを通じて環境に害を与えない製品を選んで購入しようとする傾向も強まっていますね。

せりか:今後作ろうとしているソリューションや解決したいと考えている社会課題はありますか。

ジミー:私たちにできることは、まだたくさんあると思っています。特に最近は、地球上のどこで温室効果ガスが排出されているかを把握できるセンサを搭載した新しい衛星が登場してきています。メタンの流出源や二酸化炭素の排出源、そして世界で大規模な森林伐採が行われている地域を適切に追うことで、気候変動の原因と影響を理解できるはずです。

せりか:気候変動や環境問題に取り組む宇宙関連企業も増えてきましたよね。宇宙ビジネス……特に地球観測事業はいま、どのような段階にあると考えていらっしゃいますか。ジミーさんがOrbital Insightを創業した時期から変化はありましたか。

ジミー:最近は地球観測分野の多くのスタートアップ企業が株式上場を果たしました。彼らは衛星を製造して、打ち上げる多くの費用を持っているはずです。老舗企業も新しい衛星を打ち上げて、運用を始めています。

同時に、衛星画像を分析して必要な情報を抽出するAI技術も発展してきていますから、私は今後の数年間は衛星データの利用の幅が大きく広がっていくことを楽観していますよ。

せりか:私がこれまで話をうかがったスタートアップのなかにも、衛星の開発を加速させている企業がありました。ジミーさんがおっしゃったように、衛星画像の利用が急速に進んでいることを私も実感しています。では、最後に読者の皆さんにメッセージをください!

ジミー:私が最後に伝えたいのは、世界は非常に混沌としていて、急速な変化を遂げているということです。特に貧困や難民問題は現状を知れば知るほど、必要な支援や対応ができるようになりますよね。世界をより良く理解することは、社会を良くしていくための開発目標の達成に繋がるでしょう。

せりか:テクノロジーの登場……民間に開放された地球観測技術とAI技術が組み合わさって、私たちは地球上で起こっていることを即座に知れるようになりました。そして、社会をより良くしていくための取り組みを支えていくのですね。ジミーさん、素敵なお話をありがとうございました!

せりか宇宙飛行士との対談シリーズ第12弾のゲストは、Orbital Insightのジミー・クロフォードさんでした。

次回は損害保険会社・損保ジャパンの担当者に、「宇宙保険」についてうかがいます。お楽しみに。

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