AI技術開発の第一人者が語る「宇宙の目」の貢献とは【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#12】

「宇宙開発」と一口に言っても、開発しているものやその目的はさまざま。

このシリーズでは、ワープスペースのChief Dream Officerに就任した伊東せりか宇宙飛行士と一緒に宇宙開発の今と未来を思索していきます。

第12弾となる今回のテーマは、衛星データを用いた社会課題の解決です。シリコンバレーのスタートアップ企業・Orbital Insight(オービタルインサイト)社の創業者で会長兼CTOのジミーさんことジェームズ・クロフォードさんをゲストに迎え、せりか宇宙飛行士と議論しました。



NASAの火星探査ローバーとAI技術



(c)小山宙哉/講談社

せりか:お会いできて光栄です。ジミーさんのことは、Orbital Insightのアジア太平洋統括責任者であり日本オフィスの執行役員社長のマイク・キムさんからうかがって、ぜひお会いしてみたいと思っていたんです!

Orbital Insight に聞く、宇宙から見守る持続可能なものづくり【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#4】

2022年2月に公開した第4弾では、マイク・キムさんにOrbital Insightが日本オフィスを開設した経緯や地理空間分析プラットフォーム「Orbital Insight GO」でパーム油のサプライチェーンをモニタリングすることで環境への負荷を削減する取り組みなどをうかがいました。



ジミー:よろしく、セリカ!

せりか:私は宇宙飛行士としてNASAでも訓練を受けています。マイクさんから、ジミーさんはNASAで火星探査プロジェクトに携わっていたと聞きましたよ!

ジミー:はい、そうです。何年も前に人工知能(AI)の博士号を取得して、NASAのエイムズ研究センターでロボット工学の責任者を務めました。AIは人間にはできて、コンピューターにはできないことをどうすればコンピューターができるようになるのか考えるためのヒントを見つけようとするものだと思っています。

NASAでは、火星探査車の火星での行動をAIを使って決めるプランナーを開発し、科学者がやりたいことをもとに、火星探査車のどこにカメラを設置するのかを決めたり、どう動くのか、またデータの送信方法などを計画したりすることができるようにしました。


(c)小山宙哉/講談社

火星に探査車が着陸することは難しいです。だからこそ、何年もかけて開発した私たちの火星探査車が無事に火星への着陸を成功させて、地球に無線信号を送ってきたとわかったときは、とても興奮しましたよ!

せりか:火星は大気が薄いので、地球のようにパラシュートを使って減速しながら地表に着陸するのは難しいと言われていますよね。実際に着陸に失敗してしまった探査機も多くあります。ジミーさんにとって宇宙はどのような場所ですか。

ジミー:宇宙は本当に重要なフロンティアです。地球を宇宙から見ることで理解を深められますし、月やほかの惑星での資源採掘、そして移住もこれからの数十年間でできるようになると思います。宇宙探査や宇宙を利用した試みを増やしていくことは、今後10年間で人類が行うことの中で最もエキサイティングなことのひとつになるのではないでしょうか。
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