長い金融緩和の時代が終わり、新たなマーケット環境への対応が必要に
──米国の金融政策の変更で、高インフレ高金利の状況がしばらく続くのではないか、とも言われますが、この状況は暗号資産のマーケットにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
平野:高インフレになると基本的に、リスクを取って投資する意義が薄まります。国債を持っているだけで3~4%の利益を得られるのなら、あえてリスクをとって株式を保有する投資家は減ります。
今までは銀行にお金を預けていても低金利でお金が増えなかったので、みんなリスクを取って投資をしていたわけです。それが高金利時代になると、状況が一変する。
これが、暗号資産にどういう影響を及ぼすかというと、やはり資金が入りにくくなると思います。VCの話も出ていましたが、リスクを取らなくても、ある程度のリターンが見込めるのなら、ベンチャーや暗号資産の事業に投資するモチベーションも当然下がります。
ただ、これがすぐに起こるかといえば、現在、運用中のファンドの残金は過去最高の水準で、すぐに投資熱が一気に冷え込むことはない。ただ、この先、高インフレの状態が10年近く続くともし考えるならばそうなっていくだろうなと思います。
城戸:難しいのは、これからは暗号資産の以外のマーケットもちゃんと見る必要があるということですね。
これまで暗号資産だけを見て運用してきた人もいるかもしれませんが、今後は、他の市場との関係とか、経済政策などの影響を考慮せざるを得ない。そうしたマクロの経済環境を考えられない人にとって暗号資産の市場は、これまでに比べて難しい相場になっていると思います。
今後は、市場全体を俯瞰できる幅広い知識が必要で、私たちのリサーチもさらに幅を広げていかなくてはならないと思っています。
マーケット参加者が変わること暗号資産もマクロの影響を受けやすくなった
──市場規模が大きくなるにつれて、マクロの影響を受けやすくなっていくということですか。
平野:暗号資産の場合は、市場規模が大きくなってきたというより、これまでと異なるマーケット参加者が増えたということでしょうね。ほぼ同じようなことなんですが、少し意味が違う。
以前、ビットコインに投資してる人は、ほとんどが個人投資家で、その個人投資家も何か大きな視点を持っていたわけでもなかったんですね。
大きな市場参加者がいないということは、株式とか不動産とかそういう資産を持っている投資家が少ないということです。暗号資産しか保有してない投資家は、他の市場で資産価値が下がってもリバランスする必要がない。
だから、他の市場が目に入らず、暗号資産だけを見るようになる。それが暗号資産にも株式など伝統的な資産を保有する投資家も増えてマクロの環境に合わせてリバランスを考える投資家が増えた、それでマクロの影響をより受けやすくなった、ということかなと考えています。