ビジネス

2022.10.26

小型LiDARでその可能性を広げるInnoviz、日本郵便やBMW、VWと提携

Innoviz Technologiesの新製品「InnovizTwo」(写真はテスト用なので車外に搭載)


レベル5にも対応、VWにも認められた実力


InnovizのLiDARはレベル4、5の自動運転にも対応している。レベル4は「特定条件下における完全自動運転」であり、レベル5は「完全自動運転(常にシステムがすべての運転タスクを実施)」となる。Innovizの製品は技術的にはレベル5を利用できる段階にあり、現在は検証を行っているとこだ。

このレベル5では、車両はあらゆる条件下ですべての運転タスクを実行する。つまり夜間や悪天候下でもLiDARはその性能を発揮しなければならないが、先にも述べたとおり、Innovizの製品は技術的にはそれをクリアしている。

自動車メーカーがLiDARの搭載で重要視するのは、高速道路を走行中に、タイヤのような小さくて反射率の低い物体を確実に検出できることであり、天候や照明、道路状況(坂道などによる傾斜や湾曲など)による検出の低下となる。


InnovizのLiDARは夜でも確実に機能する

先に発表された同社の新製品「InnovizTwo」は自動車メーカーが求める基準を上回り、より遠距離に対応し、高解像度、広い視野を実現。フォルクスワーゲン向けで、レベル4、5に対応している。


前モデルであるInnovizOneと比べてより高性能になったInnovizTwo。価格も安価に

日本はLiDAR企業にとって魅力的な市場


Innovizはイスラエルの企業だ。急成長する同社は世界各国で活動しており、日本もそのターゲットだ。シュクラ氏は日本に駐在している。

「日本はLiDAR企業にとって魅力的な市場があり、Innovizの製品やアプリケーションはそのニーズに応えることができる」とシュクラ氏はいう。「現在、モノの移動を担う自動運転配送車や宅配ロボットも、サービスの社会実装が本格化すれば相当数の需要を生み出します。農機具や建築機械などの自動運転技術も開発が進んでおり、さまざまな作業と自動運転を両立し無人化や省力化を図る動きが加速しています」


Innoviz Technologiesジャパンカントリーマネージャーのシュクラ氏


「また、ドローンでもLiDARの活用が見込まれています。モノを運ぶ配送ドローンの実用実証をはじめ、人の移動を可能にするいわゆる『空飛ぶクルマ』の開発も大きく前進。さらに測量向けや災害時の状況把握などへの活用も進んでおり、こうした場面でも空間把握を得意とするLiDARが本領を発揮するでしょう」とシュクラ氏。

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術などでもLiDARの導入が進んでおり、点群データとして取得した地形にエフェクトを描画することで立体的な演出が容易になるなど、世界だけでなく日本でも今後、LiDAR技術が広く利用されるようになると考えている。

先にInnovizは日本郵便と提携した。これにより両社は日々、郵便物を配送する車両にLiDARセンサーを搭載し、その経路である道路や周囲の建物の変化といった情報を集め、デジタル地図の構築を目指す。データは、自動運転や無人配送など次世代の住民向けサービスの基盤にすることが可能で、道路の損傷状況といった地域課題解決や新たなビジネスにも活用できるという。

Innovizはこの提携はにとっても絶好の機会だと考えており、配送ルートに沿って道路や建物の変化などの情報を収集し詳細なデジタルマップは自動運転や次世代サービスを実現するための基盤となる可能性がある。スマートシティ市場が急拡大するなか、自動運転以外のLiDARの活用方法としてさまざまな活用ができるその良い事例になるかもしれない。

自動運転の枠を超えて期待されるLiDAR


現在、Innovizは自動車市場にフォーカスしているが、同社のLiDARは交通機関のシャトルバス、配送車、トラック輸送、農業、鉱業、製造業といった用途にも適しているという。

平行して開発しているアプリケーションには、ドローンとUAV、スマートシティインフラストラクチャ(コネクテッドビル、セキュリティと監視、交通管理)、HDマッピング、重要なインフラの保護、および産業用アプリケーションなどに対応したものがあり、さまざまなシーンので利用にInnovizはすぐに対応できる。

今年はフォルクルワーゲンの子会社CARIADやアジアに拠点を置く大手自動車メーカーなどとの提携も発表。日本の大手建設会社である大林組とも提携している。

自動運転だけでなく、さまざまな用途での利用が期待されるLiDAR。日本でもInnovizのLiDARを搭載した製品、サービスに触れる機会が今後増えるだろう。

文・編集=安井克至

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