校則見直しには慎重な意見も多かったが……
校長の許可は出たものの、当初、学校では校則見直しに慎重な意見も多かった。高校卒業後に就職する生徒が多い中で、髪型や服装が乱れた印象になれば就職にも影響するのではないか、学校の評判も悪くなるのではないかという懸念もあった。
生徒会を中心に有志のメンバーも加わった21人は、カタリバのスタッフのサポートも受けながら、校則について何度も話し合った。「自分たちにとって校則とは?」「校則は何のためにあるのか?」「プロジェクトのゴールは?」と話し合ううち、目指す姿が見えてきた。それは、「先生と生徒が対立せずに、生徒が主役になれる学校。個性が尊重される学校。より楽しい、自由になれる学校」だった。ゴールは「生徒主体の学校づくり」に決まった。
「自分たちにとって校則とは?」と何度も対話を重ねる生徒たち。写真中央が山村向志先生
ただ不満をぶつけて大人に認めさせるのではダメだ。生徒たちは主体的にリサーチを始めた。反対している教員たちの不安や懸念を生徒たちが熱心にヒアリングすると、教員もその姿勢を見て丁寧に応えてくれた。生徒たちは教員の不安や懸念を払拭するための具体的なリサーチを始める。
全校生徒にアンケートを実施し、校則に対して生徒がどのような意見を持っているかをリサーチ
企業の人事課、街頭インタビューなどでリサーチ
全校生徒へのアンケートから改定する校則を絞り込み、スカート丈、ツーブロック、女子のヘアアクセサリなど仮の改定案を作成。現行の服装頭髪指導の基準とされていた「いつでも面接に行ける姿」としてどんな姿がふさわしいのかをサービス業、製造業の人事課など実際の企業にリサーチに行った。市役所にも採用基準をたずね、近隣の自治会100人にはアンケートを実施、駅前で街頭インタビューに立ち率直な意見を集めた。
高校の最寄り駅、改札口の前に立ち街頭インタビューを行う生徒たち。街の人も積極的に協力してくれた
生徒たちはリサーチによって厳しい意見が出るかもしれないと半ば心配していたが、「ツーブロックは採用に影響しない」「厳しすぎると思う」「こうしてリサーチしている行動力がすごい」など肯定的な意見が多く集まり、生徒は自信を得て活動はより主体的になっていった。
それらのデータをまとめて職員会議でプレゼンをした。教員でも緊張する空気の中、その姿は堂々としたものだった。その様子を見た教員たちは、生徒が本気で懸命に取り組んでいることを知り、活動に関心を持つようになった。テレビの取材が入るようになると、保護者や地域の人たちからも肯定的な評価が学校に届くようになっていった。