iPad OSの弱点とされてきたマルチタスク機能も、iPadOS 16の新機能である「ステージマネージャ」が使えるようになると、いよいよ本格的にmacOSに操作性が近づいた実感がある。
従来iPadOSはアクティブなアプリを全画面表示にしたり、またはSplit ViewやSlide Overといった機能を使って画面を分割表示にしながらマルチタスクをこなすことができた。ステージマネージャが加わると、現在立ち上げている複数のアプリを把握しながら、次のタスクへの切り替えをイメージしながら作業を進めやすくなる。
アクティブなアプリのウィンドウはサイズを自由に変えたり、最大4件のアプリを横に並べて表示できる。画面の下に常時表示されるDockからアプリが切り替えられる操作感もmacOSに近い。
ステージマネージャは現時点でApple M1以降のチップを搭載するiPad Pro、iPad Airのみ使える機能だ。第10世代のiPadはA14 Bionicチップを採用しているので対応できない。マルチタスク機能の生産性を高めるステージマネージャが使えるアドバンテージなど総合的に考えれば、自ずと「ビジネスパーソンが選ぶべきiPadはPro」であることが見えてくる。
ちなみに、筆者はiPad ProにLINEが開発した音声レコーダー兼、日本語の音声自動文字変換にも対応する「CLOVA Note」アプリを入れて、インタビューの記録用に活用している。またiPadなら、取材中大きなスクリーンに表示されたプレゼンテーションの画面をメインカメラで撮りながら資料として記録できる。MacBookとiPadを上手に使い分けられるようになってから、自身の働き方を改革できた手応えがある。
テキストエディタで会議のメモを取りながら「CLOVA Note」アプリで音声を文字に起こしたり、iPadならではの使い方がビジネスシーンにも活かせる
ライバルは第9世代iPadと第5世代iPad Air
現行iPadシリーズに第10世代のiPadが新しく加わったことで、特にエントリーからミドルレンジのラインナップが多様化した。ICT教育のツールとして、あるいは店頭のディスプレイや会計用端末としてコストパフォーマンスの高いiPadを必要とする教育関連の現場、商業施設の期待には引き続き4万円台で買える第9世代iPadが応えるだろう。
アップルが第5世代のiPad Airが値上げをしてまで販売を継続したことを、最初筆者は意外に思った。だが新しいiPad Proを試用してみると、新機能のステージマネージャと第2世代のApple Pencilが使える「10万円以下のiPad」があることの大事さもよくわかった。
先に個性を確立している2つのiPadの間に挟まれる格好で、第10世代iPadは独自の魅力をアピールしなければならない。例えば「ビデオ通話の快適さ」は1つ挙げられるだろう。第10世代のiPadだけが本体を横向きに構えたときに、上部中央にフロントカメラが鎮座するようにレイアウトを変更している。カメラの位置がサイド側になる従来のiPadよリも、ビデオ通話の際自然に視線を向けやすい。リモートワークやリモート学習が広く普及した時代の「新しいiPadのスタンダード」として、アップルは機能の周知を徹底したい。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
過去記事はこちら>>