「自由に考えて」と言われたら、あなたはうれしいだろうか? 私は緊張する。広すぎる自由のなかで、何をしたらいいか途方に暮れてしまう。広告のクリエイティブの仕事をしていると、得意と思われることがあるが、自由に発想することは苦手だ。
小学生のころの自由研究も大嫌いだった。どうしたらいいかわからない。「自由ってなんだよ」「丸投げだ」と怒りながら、興味もないテーマで適当にまとめる、名ばかり「自由」研究をやっていた。そしていま後悔している。自由研究って自分の興味を広げる、子ども時代の大きなチャンスだったのではと。
「不自由」な自由研究の教材を開発してみた
書店に並ぶ自由研究関連教材を調べると(大人がつくった)テーマが羅列してあるものが多い。学校の先生にヒアリングしたところ、こういう教材からテーマも結果も書き写す子が結構いるらしい。かつての私のように。それってもったいない!
興味や好奇心はあるけれど、いきなり自由に発想したり表現したりすることが苦手な子のために。子どもの興味や疑問から出発して、オリジナルで自由なテーマをつくるサポートをしたい。自分らしさを発見&発揮するために、あえて不自由な制約を課す「不自由で自由をつくる」コンセプトのもと、教育の研究所のメンバーと共に『世界でひとつだけの自由研究のつくりかた』という教材冊子を開発した。
教材ロゴ。学校やイベントで授業を実施中。共同開発:大山徹・吉森太助・大熊雅士
不自由な仕掛けはこうだ。1. 毎日細かな質問に沿って「興味のタネ」を集める、2. その興味のタネと「まほうの言葉」のみを組み合わせてテーマを複数つくる、3. いちばん面白くなりそうと思えるものしか今年の自由研究のテーマにしてはならない。
興味のタネが「朝の納豆ご飯」の場合。その前後に数十種類の「まほうの言葉」カードを組み合わせていくと、例えば「意外な朝の納豆ご飯大実験」というテーマができる仕組みだ。この「まほうの言葉」がポイント。「最強の」「わが家の」「変な」といった前につける言葉と、「の秘密」「大図鑑」「自慢」といった後ろにつける言葉のバリエーションを何十通りも組み合わせる過程で、自分のなかの探究のベクトルを探り、定めることができる。
自分の「興味のタネ」と、緑の「まほうの言葉」カード数十種類を組み合わせてテーマをつくる。
良い「不自由」をつくっちゃおう
抑圧してその子らしさを奪うような不自由ではなく。目指したのは「自分の好奇心の鉱脈はどこか? それをどう広げるか?」の解像度を高めて考えるための良い制約(補助線)。楽しかったことは? 驚いたことは? 実は苦手なものは? 人生で一度やりたいことは? といった興味を洗い出す質問、段階的なスモールステップ、探究のベクトルを定める「まほうの言葉」の利用ルールなど、ポジティブな不自由さで自由=自分らしい発想を促すサポートを試みた。