『 Protecting U.S. Technological Advantage(米国の技術的優位性を守るために)』というタイトルのこの報告書では、科学技術における米国の成功が、他の国々を刺激して、大学の設立、研究開発への投資、世界中からの人材獲得を促していることが指摘されている。他の国、特に中国では科学、技術、工学、数学(STEM)分野の学生の国内育成が増加している。今回のNAS報告書は、米国科学、工学、医学アカデミーが共同で発行したものだ。
報告書では、科学技術のグローバル化を測る指標として、1980年以降に米国の大学を卒業した留学生の数が増加していることが挙げられている。この増加は、米国経済と米国の技術的リーダーシップに恩恵をもたらしていると報告書は指摘している。
全米政策財団(NFAP)の分析によれば、米国の大学ではフルタイム大学院生のうち電気工学で74%、コンピュータ・情報科学で72%、数学や材料科学を含む分野では50〜70%が留学生であることがわかっている。
NASの報告書が引用しているNFAPによる調査では、米国のノーベル賞の約3分の1が「物理、化学、医学の分野で、米国に移住した科学者が受賞している」ことが明らかになっている。
全米科学アカデミーの報告書は、高度な技術を持つ人材をめぐる世界的な争いに他国が参戦してきたために、米国が人材を引きつける上で問題を抱えつつあることを指摘している。
NASの報告書によれば「最近の証拠によると、米国の移民政策は、留学生が新しい会社を設立したり、スタートアップで働いたりする可能性を阻害している可能性がある」という。「他の国では、米国で訓練された学生などの人材を確保するための取り組みが始まっている。最近の米国の移民法改定によって、留学生は学位取得後に(任意の実務訓練を経て)より長く働けるようになったものの、一時的就労ビザ(H-1Bビザ)の数には、需要が高い職種であっても上限が設けられている」