「移民を増やし、移民科学者を増やせ」全米科学アカデミーが米国内に向け提言

移民学者だったアインシュタイン(Getty Images)


この報告書の唯一の主張ではないものの、全米科学アカデミーは米国の政策立案者たちに、移民を増やし、外国生まれの科学者やエンジニアをもっと米国に呼び込むために、実現可能なことは何でもするよう繰り返し勧告している。「国際的には米国は科学者、エンジニアそしてその家族がこの国に来て、働き、生活することを奨励する、新しいより良い方法を見つける必要がある。たとえば、就労ビザのレベルを学生ビザのレベルにさらに近付けることや、トップレベルの国際研究者の市民権取得への道を開くことなどの手段がある」

NASの報告書はさらに「研究環境において外国人人材に過度の制限を課すことは、優秀な人材が米国に来ることを思いとどまらせ、彼らが他の場所を探して生活や仕事をするようになるため、米国の競争相手に利益をもたらことになる」と指摘する。

バイデン政権の外国人人材誘致のアプローチは、トランプ政権の政策とは正反対であった。トランプ政権は、雇用主や高スキル外国人に対して、事実上法的な戦争と見なされる行動をとり、高スキル就労ビザの拒否率を大幅に高め(裁判所は違法と判断)、高スキルビザ保有者の入国を禁止する大統領令を発出した。

その後バイデン政権が2022年10月に発表した 国家安全保障戦略報告書では「我々はまた、長年の非対称的な戦略的優位性、すなわち世界最高の人材を引き付け、保持することに注力する。より多くのグローバルなSTEM人材を惹きつけることは、我々の国家安全保障とサプライチェーンの安全保障にとって優先事項であるため、我々は最近のビザ発行措置を積極的に実施し、議会と協力してより多くのことを行っていく」とされている。

その一方で、チャールズ・グラスリー上院議員(アイオワ州・共和党)は、2022年8月9日に成立した2022年CHIPS・科学法案に重要な移民対策が含まれることを阻止した。グラスリー上院議員は、STEM分野の博士号を持つ外国人と「重要な産業」における修士号を持つ外国人に対する、グリーンカードの年間発行数制限の廃止を阻止したのだ。

技術分野での米国の優位性を維持(あるいは回復)するための努力は、今後も続くだろう。米国科学アカデミーの報告書は「国内の人材を拡大する努力に合わせて、米国は一流の学術研究大学を含む国際的な人材に提供する便益を積極的に拡大する必要がある。それは、オープンで資金力があり、評判が高く、革新的な研究環境やベンチャー支援による起業家的イノベーションシステムがあること、そして官民の研究開発パートナーシップなどだ」と結論づけている。「中国や他の国は、彼らのシステムが抱える制約のために、これらの利点に肩を並べることはできない」

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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