「水の循環」をテーマにしたフルコース
「この森を未来につないでいきたい」という尾田さんの熱い想いを心に刻みながら、さらに曲がりくねった道を登ると、いよいよレストランが出現。真っ白なクロスがかけられたテーブルが林道に沿って並ぶ、幻想的な空間だ。
スギのさわやかな香りに癒されながら席に着くと、レストランの支配人である諏訪綾子さんが登場し、いよいよ会の幕開けだ。コースは「水の循環」をテーマにした全7品で、それぞれ諏訪さんのディレクションのもと地元の料理人が地元の食材をつかって調理した。
フードアーティストの諏訪綾子
ひと皿目のタイトルは、“降り積もり雪解ける山水”をイメージした「雪」。熊の脂煮の炙りや自家製の甘糀をつかった淡雪など“白色”にこだわり、真っ白な雪が降り積もる冬の白山が表現されていた。
ひと皿目の「雪」。パウダースノーが降る様子を表したパフォーマンスも。ガラスの器は、白山麓に積もる雪にインスピレーションを受けて特別に制作されたものだ(料理人:「一里野高原ホテル ろあん」料理長 井上孝幸)
2皿目からは、その雪解け水が浸透する「土」、山水を吸収して育つ「木」、山水が流れていく川の「石」、山水のめぐみを受ける「田」、そして山水が行き着く先である「海」と、皿上で“水の循環”を演出。すべての料理で実際に白山の山水が使用されていて、味覚だけでなく視覚や聴覚でも水の流れを感じられる工夫がなされていた。
4皿目の「石」。手取川の石の上に地元の岩魚や川海苔などの食材を盛り付け、山水の出汁をかけることで川の水が石を磨く情景を演出した(料理人:「和田屋」料理長 関直斗)
6皿目の「海」。ふぐの卵巣のぬか漬けに山水をかけて味わうことで、川が海に流れ込む様子を表現した(料理人:「鮨 美浜」大将 伊藤浩佳寿)
一部の料理にはクロモジやヒノキを蒸留してつくった蒸留水が使用され、盛り付けや演出ではスギの木の皮や葉なども登場。白山麓の“香り”も存分に楽しめるひとときであった。
森の中にシークレットテーブルが出現
6品の食事が終わると、「いよいよ長靴の出番ですよ」と諏訪さん。案内されるがままに席を立ち、ぬかるんだ小径を下っていく。
滑って転ばないようにと足元ばかり気にしていたが、ふと目線を上げると、森の中にぽかんと開けた空間が。近づくと、切り株が並んだ小さなレストランが現れた。ここが最後の1品、デザートを振る舞うためのシークレットテーブルだ。
この日のために整備されたシークレットテーブル
7皿目のタイトルは、“そしてまた還るめぐり巡る山水”をイメージした「雲」。地元のかた豆腐など食感の違う5種類の豆腐を使い、「水を食べるということ」を感じられる甘味に仕上げた。豆腐の堅さや締まり具合の違いは、山から海までそれぞれの土地の特色に影響を受けているからだという。
7皿目の「雲」。テーブルの上で雲から雨(クロモジの蒸留水)が降る様子も演出された(料理人:「茶寮杣径」料理長 北崎裕)