「ボーンチャイナ」の意味を知ったら、カップを買いたくなる理由

「ノリタケの森」内のカフェでは、ノリタケの食器で食事やコーヒーが楽しめた

先日、JR名古屋駅前で腕時計に目をやると、2時間ほど時間に余裕があることに気がついた。この時間をどうやって有意義に使おうか。そう考えているうちに、ふと行きつけの喫茶店のマスターとの会話を思い出した。

ある時、カップ&ソーサーの収集家でもあるマスターと、世間話に興じたことがあった。国内の焼物産地の話題となった時、マスターが「名古屋駅の近くにノリタケの面白い施設があるそうですよ」と口にした。その時は「いつか行ってみたいですね」と当たり障りのない返答をしたのだが、その時の会話が急に思い起こされたのだ。

これも何かの縁だ。行ってみよう。そう決意して地図アプリで調べてみると、マスターが言っていた「ノリタケの森」まで、現在地点から徒歩13分と出ている。これなら徒歩で問題ない。蒸し暑い日だったので、パソコンやらプロジェクターやら荷物をすべて駅のロッカーに押し込み、カメラと財布だけ持って歩き始めた。


「ノリタケの森」に設置された噴水

「ノリタケの森」は、クラフトセンターやミュージアムなどが集まる施設で、ノリタケカンパニーリミテド本社の隣にあった。敷地は庭園のようになっており、二段になった噴水が水しぶきを立てている。道の脇に置かれたベンチでは、観光客やビジネスパーソンたちが思い思いに時間を過ごしている。筆者は外を一通り見物した後、建物へと向かった。

受付で入場料500円を支払い、中に入る。1、2階にクラフトセンター、3、4階部分にミュージアムが入る建物だ。オールドノリタケなどが鑑賞できるミュージアムは素晴らしく、展示に見入ってしまった。それに負けず劣らず、生地製造と画付けの工程を紹介するクラフトセンターも、見どころが多くあった。特に画付けの実演では、表面がつるつるしており、かつ平面でないカップに、筆で花などを一つひとつ描いていく。作業のあまりの繊細さに心底驚いた。

ボーンチャイナ。この単語を耳にしたことはあったものの、筆者は間違って理解していた。中国で生まれた(born)、つまり「中国に起源を持つ磁器」を意味するのだと思い込んでいたが、これは誤りだった。
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文・写真=田中森士

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