最後に諏訪さんがゲストたちに問いかけた。
「100年に1度のテイストはいかがでしたでしょうか?」
この地域では「百年水」という言葉がよく使われる。白山に降り積もった雪は、森をめぐり、風土をめぐり、100年の時を経て都市部で湧き出るのだそうだ。
今回のフルコースも、雪が降り積もるところから始まった。白山の雪解け水は土に浸透し、植物が吸収し、手取川になって流れていく。そして川の石や砂利に濾過されながら、都市部で田んぼや地酒に活用される。最終的には日本海に流れ、また雲になって雨や雪になる。そんな風に山水が一巡してまた白山に戻ってくる様子を、食を通じて体感することができた。
この日のために整備されたシークレットテーブル
「目の前に広がるこの森の山水は、100年後の誰かの喉を潤し、あじわいを生み出すのかもしれません」(諏訪)
100年前にこの森で生まれた山水をあじわいながら、100年後に思いを馳せる。そんな贅沢、かつ学びになる食体験がここにあった。
「QINO」がユニークなのは、東京と石川の双方のメンバーが同じように危機感を共有し、当事者意識を持って共創している点だ。今回のようなレストランだけでなく、地元の企業・学校・行政と連携しながら、間伐材や未利用木材を活用した商品の開発や「木育」などにも取り組んでいる。直近では9月25日に、白山手取川ジオパーク推進協議会との連携協定締結式も行った。
キノレストランは次回開催に向けて準備を進めているほか、都内でも「木育」に関するイベントを予定している。大人から子どもまで多くの人を巻き込み白山市の関係人口を増やしていく、彼らの取り組みが楽しみだ。