不況で発明者の特許が急減、大企業がイノベーションの中心に

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大企業への逃避は優秀かつ経験豊富な人材に顕著で、その結果、スタートアップには、それほど優秀でない少数の人材プールが残されることになった。この現象には深い意味があると研究者は考えている。

「新型コロナが始まったときから、スタートアップの潜在的な人材プールが減少し始めただけでなく、人材プールの質が落ちたことを意味する」と研究者らは指摘する。「従来の企業はより多くの現金を持っている、より確立されているという性質上、危機の間、安全だと認識され、人材を引き付けるという点で突然、優位性を持った」という。

大企業の活動


ケロッグ経営大学院の研究によると、独立した発明家がイノベーションの源としてかなり一般的であったのが、今日では最小限の役割しか果たさないようになった理由の一端はこのような事情にあるという。その代わり、今日のイノベーションの大部分は大企業から生まれており、以前独立していた発明家たちのほとんどが大企業に行き着いたと研究者らは考えている。

研究者らは、20世紀にはイノベーションが資本集約的になり、このためにイノベーションが独立した発明家ではなく大企業によって行われるようになったというのが従来の通説だったと強調する。これは間違いなく事実だが、不況が発明家に比較的安全な場所を大企業に求めるよう仕向ける一因になっていることも研究で明らかになっている。

これが一時的な変化であればよいが、大恐慌のデータによると、独立した発明家によるイノベーション活動は1930年代に急激に落ち込み、経済状況が好転したときでさえも再び回復することはなかった。これは、企業活動の落ち込みが再び回復したのとは対照的だ。

しかも、この落ち込みはすべての技術分野で顕著だったため、研究者はこの現象の主要な原動力として技術的なトレンドを否定できると考えている。もし、そうでないのであれば、イノベーションの波は異なるタイプのテクノロジーの出現と同時に起こることが予想される。

安全性だけではない


もちろん、大企業が比較的安全であることは間違いないが、資本面も一因だと研究者たちは強調している。大恐慌時代、独立した発明家たちは資金調達に苦労し、地元の裕福な後援者に支援を求めることが多かったが、これは今日のエンジェル投資家がスタートアップを支援するのと同じだ。しかし当然のことながら、そうした人たちがお金を失えば、起業家を支援する余力はなくなる。
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翻訳=溝口慈子

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