不況で発明者の特許が急減、大企業がイノベーションの中心に

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「リスクや不確実性を排除することはできないため、『私たちのような会社の方が安定している』とは必ずしも言えないが、人々はよりリスクの少ない将来を望んでいるようだ」と、レグテック企業Encompass Corporation(エンコンパスコーポレーション)の人材担当ディレクター、スチュアート・アードは最近筆者に語った。「当社はリスクをともなう若いスタートアップでもなく、イノベーションの観点からインパクトを与えることが難しい大企業でもない、中間的な立場を提供できればと考えている」と話した。

物事を成し遂げる能力は、起業家的で革新的な多くの人々を突き動かすものだが、企業が起業家的な人々を前向きに捉えることも同様に重要なことだ。筆者が最近の記事で取り上げたように、創業者は否定的に見られることが多い。というのも、起業家的な衝動が消えることはなく、すぐにまた新しいビジネスを立ち上げるだろうと採用担当者は考えるからだ。

従来の銀行融資も枯渇した。これは社会広く言えることだが、大企業は頼る資金が銀行にあるか、既存製品からの収益があった。当然のことながら、資金減は若い発明家やイノベーターの間で最も顕著だった。

Encompassの人事部長ジョアンナ・コリは「人材が組織にどう貢献できるかについてはオープンマインドでなければならない。ここ数年、さまざまな経歴の人を採用してきたが、その人が組織に何をもたらし、どんな影響を与えるのかを見極める必要がある」と話す。

イノベーションの方法を変える


今後、先進国では景気後退が避けられないとみられるが、それがイノベーションに与える影響だけでなく、実際にイノベーションを起こすのはどのような企業なのかを見るのも興味深い。事態がどのように展開するか、歴史は有用なガイドを与えてくれる。

「大恐慌はイノベーションの形成における危機の役割を研究するための有用な実験室となる」とケロッグ経営大学院の研究者は指摘する。「実際、我々の研究結果はイノベーションがどのように起こり、行われるかにおいて危機が大きな変化をもたらす触媒として作用する可能性があることを表している」と話す。

資本の流れが制限されることで、イノベーションの発生が根本的に変わる。研究者は、これが米国における起業家主導のイノベーションプロセスから、より企業主導のアプローチへの移行に大きな役割を果たしたと考えている。現代にも同じことが当てはまるのだろうか。時が経てばわかる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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