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2022.10.14

「メイドインアメリカ」を「不公平の産物」にしてはならない

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バイデン政権は「インフラ投資と雇用対策法(IIJA、Infrastructure Investment and Jobs Act)」「インフレ抑制法(IRA、Inflation Reduction Act)」「半導体生産のためのインセンティブ法(CHIPS、Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors)」「科学法(Science Act)」そして「アメリカ製品購入法」(Buy America)の下での国内調達要件の強化を通じて、米国の製造業にこれまでにない投資を行っている。米国の製造業の消滅が、多くの地域で失業や貧困を引き起こしているため、こうした投資は重要だ。

だが「メイドインアメリカ」は同国内の雇用を増やすかもしれないが、その生み出す雇用が必ずしも良いものであるとは限らない。海外の工場が、労働者の搾取や米国内の雇用の喪失の原因であるという誤った、そしてしばしば外国人嫌いに基づく考え方が世の中には存在する。だが実は、こうしたことは米国人の身近なところで起きているのだ。

たとえば、現代自動車(ヒョンデ)を考えてみよう。この韓国の自動車メーカーは、テスラに迫る勢いで、電気自動車ビジネスの大きなプレイヤーとして浮上している。しかし、ロイターは2022年初めに、アラバマ州にある同社のサプライヤー2社で12歳の子どもが働いていることを報道した。書き間違いではない、12歳だ。

現代自動車のように、連邦政府による投資の恩恵を受ける立場にあり、グリーン経済の主要な担い手となる企業は、今すぐに米国の優れた雇用主であることを示す基準を提示しなければならない。だが、児童労働の証拠が示された現在、その基準は地に落ちている状態だ。

現代自動車のやり方は、米国の製造業が「底辺への競争」に陥る要因の多くを代表している。他の多くの企業と同様に、現代自動車もアラバマ州に進出するために数百万ドル(数億円)規模の税制優遇措置を受けた。アラバマ州は、投資収益率が疑わしい企業に数十億ドル(数千億円)の補助金を交付していることで悪名高い州だ(情報開示:この調査の著者は元アラバマ州議員で、Jobs to Move America[アメリカに雇用を取り戻す]に雇用されている)。現在多くのグローバル企業が、緩い規制と厳しい反組合環境を活用して、米国南部に事業所を構えている。1930年代に終わったはずの児童労働を、米国人たちの税金で支援することになるとは許しがたいことだ。

児童を雇用していた、現代自動車のサプライヤーの1つであるSMART(スマート)は、労働者を見つけるために派遣会社を利用したと弁明している。これは米国の製造業が抱えるもう1つの問題だが、多くの企業が福利厚生の支出や労働組合の結成を回避するために派遣会社を利用している。

派遣労働の不安定さは、かつて良質で長期の組合員雇用で知られた業界にとって問題であるだけでなく、危険な機器を使用する肉体的に厳しい製造業務に常に新入社員を配置することが、危険な労働環境の元凶となっている(ロイター通信によると、SMARTの工場は安全衛生に関する規制に何度も違反しているとのことだ)。
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翻訳=酒匂寛

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