NASA探査車が火星で「未来のお宝」になる人類のゴミを発見

火星のジェゼロ・クレーターの表面にあるパーサヴィアランスのバラシュートとバックシェル。NASAの火星ヘリコプター、インジェニュイティが2022年4月19日に撮影。NASA/JPL-CALTECH


NASAおよびESA(欧州宇宙機関)のヘリコプターを利用したサンプル持ち帰りミッションを別にして、火星に行くもののすべてが火星で最後を迎える。火星にある人工物の一覧をひと目見れば、赤い惑星が残骸まみれの着陸地点だらけであるとがわかる。正確に特定され軌道から確認されているものもあるが、1970以降一切電波を返してこないいくつかのソビエト製着陸機などの位置は推測されているに過ぎない。1971年のマルス2号ミッションで衝突した着陸機は、スキーを履いて命綱で繋がれた電気掃除機サイズのロボットを載せていた。

火星博物館の未来の展示物?

この貴重な火星の歴史の大部分は、2015年のハリウッド映画『The Martian(オデッセイ)』で再現されていたように、ほこりにまみれている。映画では宇宙飛行士のマーク・ワトニーが赤い惑星を1カ月間動き回り1987年のNASAの着陸機パスファインダーの残骸を掘り出し、そこにあったカメラを使って地球と交信した。

「足跡はすべて吹き飛ばされるでしょうが、ハードウェアはほこりに覆われて保存されるでしょう」と南オーストラリア州フリンダース大学考古学部の宇宙考古学者アリス・ゴーマンはいう。彼女は、火星に残された探査車に人々は愛着を持っていると考えている。「ヘリコプターのインジェニュイティがキュリオシティなどのほこりにまみれた古い探査車を見つけて写真を撮るところを想像してみてください。どんなにすばらしい写真になるでしょう」とゴーマンはいう。

宇宙ゴミ
NASAの火星探査車、パーサヴィアランスが2022年6月13日に撮影した自身の「宇宙ゴミ」( NASA/JPL-CALTECH/ASU)

人類はまだ火星に降り立ったことがないので、保護された国立公園や人類が残した最初の一歩を称える記念碑が赤い惑星に作られるところを想像することは難しい。しかし、同じような施設が月に作られることはさほど突飛な話ではない。

月も同じようにゴミにまみれている。月にはキャニスター、ケーブル、カメラなどからハンマー、トング、そして、人間の排泄物の入った袋まで、推定約50万ポンド(227トン)のゴミがある。そのほとんどが、もちろん、アポロ計画によるものだ。

NASAの歴史部門には月に残された人工物の完全なリストがあり、それには正当な理由がある。「月が国家宇宙計画および民間企業の両方によって今よりも行きやすくなったとき、月の人工物を保護することはその歴史的、科学的両方の価値において重要です」とリストの冒頭に書かれている。

月には大気がないため、初期の月面車の車輪の跡や、1960代終わりから1970年代にかけて最初の人間月面歩行者たちがつけた足跡が、数千年にわたって保存されるだろう。
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翻訳=高橋信夫

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